096.本部へ(一)
翔太と恵理が住んでいる街は典型的な寂れた町だった。中心街の商店の多くはシャッターが閉まり、空き家も数多くあった。そして人口の高齢化率は全国平均よりも高かった。そして産業は不振を極め若者たちは高校を卒業すると他の地方に行ったまま戻らなかった。それは、この国の地方都市では珍しい事ではなかった。
そんな街で住民の機械化社会実験を密かにしていたのだ。実は翔太がそのことを知った時は相当数の住民がロボット姿にされた後だった。
その晩乗ったワゴンは後部座席は真っ黒いシートが内張され外が全く見えなかった、だからどこを走行しているのか分からなかった。ワゴンはニ十分ほど走ると鉄の扉が開く音がしたかと思うと、急降下していった。どうやら地下へ降下しているようだった。
「ねえ鈴木君、小学校の時に社会見学で赤間銅山の資料館に行ったときの事を覚えている?」
いきなり昔の話を切り出すのはどうしたものかと怪訝に思ったが、翔太は軽くうなずいた。すると恵理はそう覚えていたんだといった態度になった。
「そのときにねえ、この町の地下にも坑道が広がっているといっていたじゃないの。その坑道の跡を再利用しているのよ本部はね。いまじゃ全国から密かに技術者が集められているそうよ」
その時、大きな扉が開くような轟音が車内に響いた。どうやらその坑道跡にあるという本部とやらに到着したようだ。




