009.プレイ! 鋼夜叉(5)
理恵は仮想現実の中で戦闘用ガイノイドの内臓になりきっていた。硬い外骨格に覆われ、人間ではないパワーを発揮しているのだと。ゲームではかなりの敵キャラを撃破したけど、ラスボスにはかないそうもなかった。そこで一か八かを試みた。特攻していった!
もちろん、それは無駄な抵抗だった。ラスボスの攻撃を受けたショックを感じた後で目の前が真っ赤になりゲームオーバーの文字がバイザーに浮かんだ。こうして鋼夜叉のファーストステージはクリアすることが出来なかった。
「な、なんなのよ! 悔しい!」
バイザーを外しプロテクターから解放された恵理は悔しがっていた、すると諸積が近づいて来た。
「なあ、金城」
「なによ!」
「俺、このゲームしたいから、どけ!」
「あんた何様よ! 勝手にすれば!」
理恵は見たことないぐらい荒れていた。ついでに言えば制服も汗でびしょびしょでしわだらけになっていた、とてもじゃないが女らしいと思えなかった。こんなのなら体操服に着替えてすればよかったという状態だった。
「鈴木くん! あたいの今の気持ちいっていい?」
なんで僕に振るのか訳が分からなかったが、良いよと行ってみた。すると彼女は大きな声で言った。
「あー! 一層の事、ガイノイドになってしまいたいなあ! そうしたらラスボスなんかあっという間にやっつけてやるのによ!」
彼女の負けず嫌いの一面を垣間見た瞬間だった。