004.鋼夜叉(3)
その時、目の前にいたガイノイドのボディカラーはホワイトで関節部分がブラックになっていて、顔は目はLEDで点滅し、口と鼻に開口部は無かった。ただ背中からは循環ファンみたいなものが回るのが分かった。おそらく内部で発生する熱を放出しているようだった。そういえば、この店で働いている50歳代のおばさん店員の姿は見えなかった。そのおばさんは歳の割に動きが良く、時々話しかけていたというのにである。
「あの、梅ちゃんは今日は来ていないのですか?」
僕は、そのおばさんの名前を出したが、そのガイノイドは答えなかった。代わりにこんなことを聞いた。
「鈴木さんところの坊ちゃんですよね? 梅ちゃんから聞いています。思い出したかのようにコミック本を注文すると」
なぜ、それを知っているのか? 梅ちゃんから聞いたのだろうけど、肝心の梅ちゃんがどうしているのか分からなかった。すると、もうすぐ恵理のプレイが始まりますよと言った。
モニターには恵理が仮想現実の中で、どのような状態になっているかが表現されていた。一方の恵理は仮想現実内で見ている世界をバイザーで見ているはずだった。モニターの中で走り出すと同時に恵理も足をバタバタさせていた。腰で固定されているのでそんな状態になるのだ。