039.動かない恵理
他のクラスとシャッフルされた選択授業でも恵理は他の生徒から注目されていた。その時間も当たり前といえばそうであるが、授業中の恵理はまるで人形のように動かなかった。見方によれば居眠りしているようでもあった。
先生はタブレットを操作しながらボードに映し出す画像を説明しながら教壇を右に左に動いていた。その様子を見ているように見えない恵理は微動だにしなかったのだ。先生も意図的に意識しないようにしていたように感じられた。
他の生徒といえば、自分のタブレットで教科書を確認したり、メモを取ったり、中には上の空で聞き流しているのもいたが、大抵は身体が少しは動いている。でも恵理は人形のようにピクリともしなかった。
授業の中盤になって先生はある事を理解していますかと生徒に質問した。少し難しい事だったので答えられない生徒が何人かいたあとで、恵理に質問した。すると彼女は立ち上がって、いとも簡単に答えた。でも彼女ってそんなに成績がよくなかったはずなのでは?
その時、僕ははっとした。彼女のブラウスが透けて見えたからだ。そのような光景は前にもあった。ただ、その時見えたのはブラジャーの紐などであった。いま見えたのは・・・彼女の外骨格だった。
ブラウスから透けたのは背中の外骨格の吸気口だった。たしか硬質な素材で覆われたガイノイドの場合、内部で発生する熱を放出する穴がどこかにあると聞いたことがあった。恵理の吸気口は人間でいえば左右の肩甲骨のあたりにあった。




