002.鋼夜叉(1)
鋼夜叉は綾先生によれば戦闘モノのゲームという事だった。なんでも従兄弟が勤めるゲーム会社で開発されたもので、試作機として「キャラメルママ」に設置されたのだという。でも教師がそんなことを生徒に宣伝するのはいかがなものかと思う。
この店は駅前にあって通学する生徒も通るが、今日はあいにくの梅雨で比較的強い雨が降っていてまばらだった。でも、いつのまにかギャラリーが集まっていた。みんな雨宿りも兼ねて店内にいた同級生などだった。
「いいよなあ、金城がやるなんて!」
同級生の諸積が僕の横でつぶやいていた。たしか、こいつは鋼夜叉をしたいと思ってもいつもメンテナンス中で出来ないとぼやいていたやつだ。どうも興味があったらしい。それもこれも鋼夜叉の事を綾先生がしゃべるからだけど、試作機の事をしゃべっても問題ないのだろうか? と思ってしまう。
とはいえ、ギャラリーが見るモニターでは鋼夜叉のプレイヤーの一人である女性型戦闘ガイノイドXB008が映し出されていた。それを見た諸積が恵理に向って聞いていた。
「おい、金城。あんたにはどう見えているのだ?」
諸積はクラスの中では番長のように偉そうにしているので、クラスの女子はみんな呼び捨てだった。でも、みんな苗字であったが。
「なんか、マシーンの中に閉じ込められたみたいよ! 私のヘッドギアってなんか・・・」
理恵はなにかの違和感を感じていたようだ。