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数多くの被験者の確保方法には二つの方法があった。どこかの国で密かにやるのと、国内の一部地域で半ば公然とやるものだ。前者は確保しやすいが、他国に情報が漏洩するリスクがあるし、後者はリスクもコストもそれなりにかかるが、データを管理しやすかった。
そこで選ばれたのが羽原市だった。ここは隣の町まで車で一時間もかかる僻地で、周辺が山地に囲まれて被験者の脱走がしにくいという利点があった。ただ、情報網が発達した国内なので、SNSといったネットに即座に情報がリークされる可能性が高いので、密かに羽原市内の通信機器を管理下に置く工作をしていた。そして始めたのが羽原市の拠点化だった。
羽原市は世界初といえる住民の機械化という立証実験の場となった。もちろん大多数の市民が選ばれたなんて知る由もなかった。




