137.ネオニムロッド
幕芝重工業と日本政府が秘密裡に開発した、着用すると人間をロボットのようになるスーツのシステムのことを、ネオニムロッドと呼称している。元々、ニムロッドとは旧約聖書に登場する人物名「ニムロド」に由来しているが、このシステムの開発者の念頭にあったのは、航空機の「ニムロッド」である。
もともと、ニムロッドとはイギリスで開発された対潜哨戒機であったが、元々は旅客機のコメットを改造したものであった。その後、半世紀近く現役であったが、新型を開発といっても元々ある機体を改造していたため、どんどんと不格好な姿になっていったという。そのため醜い飛行機という言い方もされていた。
ネオニムロッドとは、そんな何度も改造して別の機体にしていったニムロッドのように、人間も中身は大きく変えずに外観を変える事で、新たな能力を与えようというシステムという意味であった。すなわち元を極力変えないという事であった。
そのため、最初は本当に着ぐるみをなるべく長時間着用できるようにする性能を開発していたが、だんだんと情報処理機能やパワードスーツとしての機能、そしてついには機械と人間の有機的融合という目的に到達したのであった。恵理が着せられたスーツは目標に到達寸前といっていいものであった。
そのため、恵理が着用している試作機に引き続き前量産型が羽原市の住民に着用させる、次の段階に移行したのが、夏休み直前のとであった。




