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135.翔太の家は

 目の前の、恐らく近所の高齢女性を内臓にしたロボットは少し考えるそぶりをしていた。この時、翔太の反応はフツーの高校生の感覚だった。中に誰が入っているのかを詮索したいという気持ちと知りたくない思いだ。幕芝重工業によって社会がどのように変化するかを全てモニタニングされているのは百も承知だった。


 「そうねえ、これから何をしようかしら? せっかく身体が自由に動けるからね。まあ、食事の用意はしなくても良いけどね。でも、明日からは仕事だからね」


 そういって目の前のロボット姿にされた一団は自分の家へと帰っていった。その日から、この町の住民が同じようにロボットへと姿が変わっていくのを嫌というほど見るようになっていった。


 家に戻った翔太は工場の前で待っている恵理と・・・もう一体の白いロボットがいるのに気付いた。その白いロボットはすぐサユリという鈴木機械工業の社員だというのが分かった。それまで工場の事務作業は全て翔太の母がやっていたのだが、彼女が今日からやる様になったとわかった。


 「翔太、遅いよ! 早く研究所に行くのよ! あなたも!」


 「ぼ、僕も?」


 「そうよ! 学校で言っていたじゃないのよ綾先生が! ネオニムロッド体験会のことを! 私たちにも手伝ってほしい事があるから、打ち合わせだって!」


 「そうなのか?」


 翔太は恵理に腕を掴まれた。その手は硬いけど少し温もりがある手のひらだった。その覆われたカバーの下に恵理の生身が隠されているが、それは外観から想像するしかなかった。


 「それでは、お二人さん。エレベータを起動しますから」


 サユリはそういって操作盤に指令をインプットしていた。このエレベータを利用できるのは研究所によって改造された者だけであった。翔太もすでに一種の改造人間であった。エレベータがしたから上がってきた時、その中には数人のロボット姿の住民がいた。その人たちは機械子宮によって改造され調整された者たちだった。


 「お疲れ様! 後で指示は伝達されますから。取りあえず家に帰ってください! その前にロボフードを持って帰ってください!」


 サユリは事務所の入り口に積まれた箱を渡していった。それはネオニムロッド化された人間が摂取する流動食だった。


 「あのねえ、アルコールはねえですか? 晩酌したいんだけど」


 一人のサイボーグ化された長身の男らしいロボットがサユリに聞いていた。すると、こんなことをいった。


 「それはねえ、機械はオイルは飲んでもアルコールは飲みませんよ! なんてね! 明日までにどうするのかを決めますから今日はこれで我慢して! やり方はアプリで調べてね!」


 そういって渡したのは無味乾燥なデザインの缶に入れられたアルコールだった。身体が機械の中に閉じ込められても酒は飲みたいものなんだなと二人は関心していた。

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