012.ガイノイドに憧れる恵理(3)
恵理と僕こと翔太の家は目と鼻の先にある。恵理は兼業農家で僕は小さな工場を経営している。経営といえば聞こえはいいが、どこかの研究所や大学が発注するマニアックな製品をオーダーメードする零細企業だった。だから従業員も多いい時でも十人を超えたことは無い。いまは僅か六人で時には僕すら手伝わされる状態だ。
それはともかく、その日は珍しく恵理が付いてきた。どうも親父になにかを聞きたいようだった。親父は最近、最新鋭の3Dプリンターを導入したからだ。なんでも、とある研究機関から大口の注文が入り、その研究機関の要請で設置したんだという。しかし、なにを製造するのかを家族にすら内緒にしていた。
「あーら、恵理ちゃん。久しぶりね。うちに来るなんていつかだったかしら?」
お袋が事務所から出てきた。なんでもその研究機関からの注文で忙しくなっていて、もう少しすると派遣会社から従業員がやってくるという事だった。もしかすると創業以降最高規模に忙しくなるというが、その注文がなになのか興味はなかったが。
「こんにちは、鈴木のおばさん。少し3Dプリンターのことをおじさんに聞いても大丈夫ですか?」
恵理はそういってお袋に聞いていた。すると偶々親父が工場から出てきた。




