102.本部へ(七)
綾先生はどこかに問い合わせをしているかのような間があったあと、ゆっくと話し出した。
「そうだねえ、みんな教えたら大変だからね。取りあえず時間がないからね! ということだから」
そういって翔太は恵理と一緒に案内された。それにしてもあのロボットの正体はなんだろうか気になって仕方なかった。
無機質なコンクリートの壁には鋼鉄製の扉があり、まるで核シェルターかなんかのようだった。それについて綾先生はこんなことを説明し始めた。
「このラボは我が研究所が日本各地に設置したひとつで、かつての銅山の地下空間を活用しています。だから他のラボよりも規模はおおきいんですよ」
そういえば、そんなこと聞いたことがあった。でも、ここは東京からも大阪からも遠く離れた田舎町、なんでわざわざそんなところに設置しているのか意味が分からなかった。
さっきとは違い病院のような白い床と壁と天井に囲まれた通路を進んでいた。ところどころに監視カメラやモニターが付いていたり、アルファベットと数字がデタラメにつけられているようなドアの前を進んでいった。僕は引き返したかったが、前は綾先生、そして後ろは戦闘ロボみたいな奴に挟まれ勝手な行動が出来なかった。
そんな嫌な空気が変化したのはあるドアの前に来た時だった。綾先生がドアを開けて案内してくれた。そして通された先には・・・思ったよりも狭い部屋だった。
「先生、ここって一体?」
「ええ、ここは措置室よ。ちなみにここでは人間からロボットへの改造は行っていないから安心してね」
その部屋はまるで歯医者の待合室のようだった。待合室に当たるところにはフカフカとしたソファーが置かれ、壁にはどこか海外の風景写真のパネルが飾られていた。そして向こうには歯の治療の時に使うような長椅子が見えていた。




