010.ガイノイドに憧れる恵理(1)
鋼夜叉から解放された恵理はラスボスに仮想現実世界で負けたことが悔しそうだった。彼女の負けず嫌いな性格は幼い時から変わっていないと翔太は思った。その性格は最近ひそめていたと思っていたのに、ゲームによって復活したようだ。
「あー! 上手く言っていたのに、なんでえ?」
翔太は恵理の愚痴にうんざりしていたが、ギャラリー用の画面では現在プレイしている別の同級生がコテンパンにやられていた。どうも綾先生は他の生徒にも招待券を配っていたようだ。
「しかたないよ、はじめてなんだから。こんな最新型VRゲームなんか! 次にある時クリアすればいいんだろ?」
とにかく興奮状態の恵理をなだめようとしていた。それにしても負けたことばかり気になっているようで、彼女の制服姿は酷かった。制服はしわだらけで汗まみれで着崩れているし。
「あのねえ、金城さん!」
「なによ!」
「ブラウスがはだけているよ! 生活指導の先生に見つかったら怒られるかも」
「アッ、いけない! ちょっと直してくる!」
恵理は制服の乱れも気にならないほど、興奮していたようだ。そして今も戦い続けているような気がした。鋼夜叉の脱走ガイノイド女戦士として。戻って来た恵理は幾分ましになったが、汗臭くなっていた。そのとき、こんなことを言い出した。




