表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
攻撃力最強の俺。防御力最強のお嬢様。  作者: しいたけ
     テルル
9/29

魔女と呼ばれたい女

物語の深い設定に関わる話しです。

 リースが落ち着きを取り戻し宿屋へ戻る道すがら、2人は小洒落たお店で遅めの昼飯を食べていた。


 「どうしたの?さっきからだんまりで……」

 ピザを軽快に頬張る姿は、先程まで泣いていた人物とは

 まるで別人の様に見え、何か吹っ切れたかの様な面持ちだった。


 「どうやってあいつら倒したんだ?」

 スパゲッティをすすりながら、

 ホークは酒場での戦闘を聞いた。


 「こうやったのよ」

 リースはパンを1つ手に取り、

 小さな円盾を高速回転させ半分に切って見せた。


 「凄いな……」

 ホークは切れたパンの断面を眺め、

 その切れ味とリースの機転に感銘を覚えた。


 「でもね……」

 リースはパンを齧りながら続けた。

 「あの筋肉ダルマは私の障壁を凹ませたわ。

  悔しいけど、まだまだ力不足みたい。

  それに、この力は防御面積に反比例して

  防御力が落ちるみたいなの」


 リースの説明を黙って聞くホーク。

 しかし彼の頭の上には

 ?マークが確かに出ているのが感じ取れた。


 「()()()一度に沢山は守れないって事!」

 「分かった分かった!」

 焦るようにリースをなだめるホーク。


 「それより、金貨返しちゃって良かったの?」

 リースが最後のピザを口に入れる。


 「また襲われても嫌だからな。

  まぁ飯代くらいは抜いておいたぞ」

 金貨を机の上に並べるホーク。


 「ま、いいんじゃない」

 リースは金貨を自分の財布へしまった。





 食事を終え、店を出た2人は路地裏からの悲鳴を耳にした。


 醜くゴツゴツとした頭に鋭く尖った耳。

 鼻は低くヨダレを垂らすニヤけた口。

 紫色の肌に痩せ干せた身体。


 駆けつけた2人が目にしたのは

 死体を貪る異形な生物だった!


 「な、なによアイツ!」

 戸惑うリース。

 ホークは素早くリースの前に出た。


 異形な生物は食べていた腕をホーク達へ投げつけた。

 リースは白金の四角い盾で弾きホークが素早く殴ると、

 異形な生物は倒れ、霧の様に消えてしまった……。


 


 「何だったのかしら……」

 しかめっ面のリースが消えた生物が居た辺りを調べるが、手掛かりは何も残ってはいなかった。


 「魔物よ」

 突如現れた、つばの広いとんがり帽子に身体を隠すローブをまといあからさまに怪しい女。

 雰囲気と声色で自分たちより年上だと言う事くらいしか分からなかった。


 「どちら様で?」

 警戒態勢を取るリース。


 「魔女……とでも呼んで頂戴な」

 敵意は無い。とでも言いたげな笑顔を

 こちらへ向ける女。


 「ここじゃ何だから、

  私の研究所に来ない?

  私もあなたがさっき出した

  盾について聞きたいしね」

 狭い路地を歩き出す女。

 2人は顔を合わせ、渋々ついて行くことにした……。




 人気の無い廃ビルの地下へ降りていく魔女。

 かつて駐車場だったと思われるスペースには

 粗大ゴミの山が築かれていた。

 

 一番奥にある小さな扉。鍵穴に棒の様な物を入れ開錠する。


 「ようこそ、私の研究所へ……」

 室内は研究資料と思われる本や紙の山、動物の剥製が所狭しと

 置いてあり、2人をソファに座らせ女は自分のデスクに腰掛た。


 「こんなところでごめんなさいね」

 「いいえ、十分よ。早速本題に入って頂戴」

 リースが事を急かした。

 ホークは剥製が気になる様で、子どもの様にジロジロと眺めていた。


 「どこから説明しようかしら?」

 女はデスクにある書類を何点かリースに手渡した。

 「……そうね、さっきの『魔物』からお願い」

 リースは書類に目を通す――


 ――幻魔粒子の流出と汚染地域について――

 ――幻魔粒子の制御と流用法について――

 ――幻魔粒子の人体への影響について――


 リースには見た事も聞いた事も無い単語や説明が並んでいた。



 「この世界のどこかに、幻魔粒子の海があると言われているわ。

  幻魔粒子は自然界に徐々に溶け込み、私たちの身体へ入っていく。

  幻魔粒子がある一定の濃度を超えると、生物への身体を乗っ取り

  姿形を変えてしまうわ。それが魔物の正体よ……。

  勿論個人差は大きいけどね」

 女は至って真面目な顔で話し、2人には女が嘘を言っている様には見えなかった。


 「さっきの魔物は元は人間だったって訳!?」

 リースが少し口調を強めて話す。

 「……そうよ」

 「俺は人を殺したのか?」

 ホークが青ざめた顔になる。


 「いえ、一度魔物化した生物は、二度と戻らないの。

  あなたがやらなければ国によって処分されているわ。

  …………つまり、国。いや、魔物は世界で公認されているのよ」


 2人は顔を見合わせ、この世界の現実を知る。

 実際に魔物を目にした2人には信じる以外に道は無かった……。




 「で?これがどう関係するのかしら?」

 リースが小さな可愛い盾を出した。


 「そうね、その前にお茶でも出すわ。

  少し待ってて……」


 女は書類の山の隙間を奥へと進み、お湯を沸かし始めた……。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ