腕相撲
服も新しくなり、気分一新で大通りを歩くリースとホーク。
大通りの一角に人だかりが出来ているのに気が付いた。
「なんだあれは?行ってみようぜ!」
「あっ!ちょっと待ってよ!」
駆け出すホークの後を追い、リースは軽やかに走り出した。
人だかりの中心では腕相撲が行われていた。
体格の良い上半身裸の筋肉モリモリマッチョマンが
オッサンの腕をへし折っていた……。
「この男に挑戦する命知らずは居ないか!?
勝てば金貨100枚だよ!!」
重そうな袋に入った大量の金貨。
隣で痩せた男が客引きをやっていた。
「はいはーい!」
ホークが手を上げ席に座る。
リースは人混みで前が見えず、何が行われているのか
分からなかった。
「おっ!あんちゃん威勢がいいね!
お代は金1枚だよ。
それじゃあいってみよう!!」
お互いに手を組み、その上に審判が手を乗せる。
審判の手が離れ、試合開始の掛け声が聞こえ――
既にマッチョマンの腕は折れ、机についていた……。
一瞬の出来事に観客は静まり返り、遅れて痛みを理解した
マッチョマンの悲鳴が辺りに響き渡った。
地面に転がりのた打ち回るマッチョマン。
「あ、ごめん。やりすぎた……」
ホークは席を立ち、客引きの方へ詰め寄る。
思わず後ずさりする客引き。
「じゃあ、これ貰ってくよ」
無言で頷く客引き。
ホークは袋の中から金貨を数枚出し、
マッチョマンのそばへ置いた。
「ごめんね、これで治してよ」
マッチョマンは左手で金貨をかき集め、
逃げる様に去って行った。
やっと前の方へ出れたリース。
腕の折れたマッチョマンと、
会場の異様な空気で全てを察した。
「さ、行こうか」
ホークがリースを呼び、大通りを進んでいった。
「それはなによ」
「貰った」
「力を使ったわね」
「ごめん、ごめん。調整が効かなくて……」
頭をかき、素直に謝るホーク。
「あまり目立っちゃダメよ。
ま、しばらくは優雅に過ごせそうね」
満更でもないリースであった……。
大通りの裏にある、潰れた酒場。
ここはゴロツキ達のたまり場で有名だった。
「アニキ! 助けて下さい!!」
腕の折れたマッチョマンがソファで寝る
サングラスの男に泣きついていた。
「ん?お前まさか俺が貸した金取られたのか……?」
ソファから起き上がりマッチョマンを睨む男。
彼は腕の折れたマッチョマンより
はるかに筋肉モリモリのマッチョマンだった!
マッチョマンを殴りつける超マッチョマン。
「へへ、久々に面白そうな奴が現れたぜ……」