作戦会議〜衣装チェンジ
2人を乗せた船は、ゆっくりとした速度で穏やかな海を進む。
「良かったのか?」
ホークは窓にもたれ掛るリースを案じ、声をかける。
「いいのよ……自業自得だもん」
静かに海を眺めるその瞳は寂しさをはらみつつも諦めを
感じさせ、静かに1つ溜息をついた……。
「それより、あんたはコレ出せないの?」
リースがホークの目の前に、手の平サイズの白金の
綺麗な盾を出現させた。
ホークは顔をしかめ、右手を前に出し力を込めた。
「ぐ、ぐぐ……出ろ〜!」
しかし、何も出なかった……。
「どうやら私だけみたいね」
盾のサイズを自在に変えて遊ぶリース。
「ふふ、イメージ次第で使い方が
増えて面白いわね、これ」
「いいなぁ……」
指をくわえて羨むホーク。
リースは盾にリボンを付けたり羽を付けたり
色々と楽しんでいた。
「ねぇ……これからどうするつもり?」
盾遊びに飽きたリースは、ホークの方へ
顔を向けた。
「まずは、服を買おう。
それから住む場所も欲しいな。
仕事も探さないとな……」
やる事だらけの2人。
その顔には不安と期待が入り交じり、
決して良い顔とは言えなかったが、
後悔だけは感じて無かった……。
着くまでの間、二人は壁に寄り掛り
昨日の疲れもあり、深い眠りについてしまった。
船は針路を順調に進み、予定通り隣の国へ到着した……。
「着いたわね……」
足早に船を降りるリース。
ホークは船酔いしたのか、口に手を当て
今にも吐き戻しそうな表情をしていた。
「……うっぷ」
「もう、仕方ないわね」
リースはホークの背中をさする。
「どう?少しは落ち着いた?」
ホークの顔を覗き込む。多少は良くなった様だ。
「ああ、すまない」
ホークは気を取り直し、大通りを歩き始めた。
「ここが隣の国、テルルか……」
初めて訪れる国に色々と興味がそそられるホーク。
「まったく……これだから平民は」
リースは何度かテルルを訪れており、
多少の土地勘は持ち合わせていた。
「とりあえず、最初は服を買いましょう!」
先ほどから人目を引く2人のボロ服は目立って仕方なかった。
「いらっ……しゃいませ……?」
いきなり現れたボロ2人に服屋の店員に困惑の色が覗えた。
「これで何か見繕って頂戴」
店員に金貨を数枚握らせると、店員の顔色が180°変化した。
「はい!! 直ちにお持ち致します!!」
店中から店員が現れ、2人に合う服を何点か慌ただしく用意する。
「こちらなんか如何でしょう?」
店員がフリルの豪華なドレスをリースに合わせた。
「普通のでいいわ。これじゃあ逆に目立って仕方ないわ」
「し、失礼致しましたー!!」
店員達が慌てて服を選びなおす。
「リース。これなんかどうだ!」
若葉色のブラウスとスカートを持ってホークがやってきた。
どちらにもフリルが付いて可愛らしい服だった。
「私髪の毛緑色なのに、上下も緑じゃ全身緑よ!
しかもフリルって子どもっぽくない?」
少しばかり身長が低いリースは子ども扱いされる事に
敏感になっていた。
「そうかなぁ……。リースなら似合うと思うけどな!」
満面の笑みでリースに服を合わせるホーク。
「お!可愛いんじゃないか?」
服を合わせられたリースは満更でもない顔をした。
「ま、まぁ そこまで言うなら着ようかしら……」
リースの顔は少し赤くなり、試着室に入っていった。
「覗かないでよね」
試着室の隙間から顔を出すリース。
「はいはい」
ホークはリースが着替え終わるまで、自分の服を選んでいた。
「ど、どうかしら?」
試着室のカーテンを開け、リースが出てきた。
「ちょっと、何か言ったらどう?」
ポカンと口を開け放心しているホーク。
「あ、ごめん。あまりにも似合ってたからさ……」
「そ、そう……」
リースは再び赤くなり俯いてしまった。
店員達は全てを察し「お似合いです」を連呼した。
「結局あんたはいつもと変わらないのね……」
ホークが選んだ服はいつもとさほど変わらず、
動きやすさ重視のズボンとシャツだった。
「どうせすぐ汚れちゃうからさ……」
頭の後ろで手を組みズカズカと歩くホーク。
「そうね、いつも汚れてるわね」
道行く人々の視線はリースに注がれていた。
(グリーンウーマンがいる……)
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