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攻撃力最強の俺。防御力最強のお嬢様。  作者: しいたけ
     国外逃亡
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メチャクチャ大きい猪がいるんですが……

 城から逃げ延びたホーク達は、

 このまま国を出ようと山へ来ていた。


 「このルートなら関所を通らずに済む。

  少しキツいが勘弁してくれ」

 獣すら通らぬ様な道なき道を、

 草木を分け3人はひたすらに進む。


 3人は終始無言だった。

 ホークとリースは騎士への説明責任を

 感じつつも、騎士への罪悪感から

 中々切り出せずにいた。


 「少し休憩しよう……」

 ホークは少し開けた場所の倒木に腰を降ろす。

 騎士はまだ余裕がありそうだったが、

 リースはヘトヘトになっていた。


 「そろそろ説明してくれないか?」

 腰掛けた騎士がホークに睨みを効かした。


 「ああ……」

 ホークは一呼吸整えると、

 全てをありのまま話し始めた。


 2人で神の種を食べたこと。

 騎士が食べたのは偽物だった事。

 牢を力尽くで開けられる力を手に入れた事。

 矢を防いだ不思議な盾の事。


 「ごめんなさい……

  本当にごめんなさい」

 リースは涙を流し謝ることしか出来なかった。

 ホークは俯き、それ以上言葉が出なかった。



 「はは、何だよそれ……

  お前らのせいで俺は――」

 騎士がホークに殴りかかる!

 ホークは避けること無く歯を食いしばり、

 怒りの拳を顔面に受け、派手に吹き飛んだ。


 「ホーク!」

 騎士は倒れるホークに無言で歩み寄り、

 腹に猛烈な蹴りを何度もお見舞いした!


 「ガハッ……! グフッ!」

 「止めて!!」

 リースが倒れるホークを庇うように覆い被さる。


  ガンッ!!


 騎士の蹴りはリースに当たること無く、

 リースの身体から出る白金色の障壁によって防がれていた。


 「クソッ!!」

 騎士が地面を思い切り蹴飛ばす。


 「貴方には本当に申し訳ないと

  思っているわ。もし、城へ戻ると

  言うなら最大限の協力は惜しまないわ……」

 リースは頭から血を流すホークを庇いながら、騎士の方を向いた。


 「今更戻れるかよ!

  ありのまま説明して戻った所で

  なんて顔すりゃいいんだ!!」

 やり場の無い怒りが騎士を更に苛立たせた。


 「もういい!俺は1人で行く!

  どうせ行き先は知っている!」

 と、騎士は2人を置き先へと進んで行った。


 リースは騎士にかける言葉も見つからず、

 涙を浮かべ倒れるホークを抱きしめる事しか

 出来なかった……。





 「ギャアアアアアアアァァァ!!」

 突如、先へ進んだ騎士の悲鳴が聞こえてきた。

 咄嗟に声の方を向くリース。


 月夜に照らされし赤い瞳。

 草木をを踏む音と共に現れたのは、

 深々と牙に身体を貫かれた騎士……。

 鋭い眼光、地獄の底まで響く様な 嘶き(いななき)

 毛深い大きな体に、丸太より太い足。

 立った熊より大きな猪がノソリと闇より姿を見せた。


 巨大な猪は頭を振り回し、

 牙に刺さった騎士を振り払う。

 地面に転がる騎士。ピクリとも動かず

 胸には大きく風穴が開いていた。


 「そ、そんな……」

 恐怖で足が竦む(すくむ)リース。

 ホークはまだ倒れたまま動かない。


 巨大な猪はリースと目が合うと、

 荒い吐息を漏らし鋭い牙を向け

 全力で猛進してきた!


 「来ないで!!」

 両手を前へ突き出し防御の構えを取るリース。

 リースの前に白金色のシンプルな大きい盾が出現した。 


 猪の牙がリースの盾と衝突する!

 「くっ……くぅ!」

 リースは両腕に力を込め、

 猪の突進を止めようと必死だ。


 「グゴ、ゴゴ……」

 猪は盾の防御もお構い無しに、

 そのまま押し切ろうとする。


 ジリジリと押されるリース。

 猪が牙を横に払うと盾は弾かれ、

 無防備なリースが姿を現す。

 猪の牙がリースのお腹を捉えようとしたその時――



 猪の牙を握る手……。

 力を込め、一瞬で粉砕……。

 猪はバランスを崩し倒れた……。


 「……え?」

 自分が無事な事に一瞬戸惑うリース。

 視界に映る腕を辿ると、

 そこには息も切れ切れなホークが立っていた。


 「ホーク!!」

 リースは嬉しさのあまり

 ホークの首に抱き付いた。


 「いでで!」

 「あっごめん……」

 慌てて離れるリース。

 猪は自力で起き上がると、

 こちらを睨みつけまだ戦う意思を見せた。


 「俺の後ろに居ろ」

 ホークがリースの前へ出た。

 ホークは腰を落としカウンターの構えを取る。


 牙を折られた猪は興奮し、

 先程より強い勢いでホークへと突進した!



 ホークは猪の突進に合わせ、

 低い姿勢から渾身の右アッパーを繰り出した!

 ホークの拳はもう1本の牙を砕き、

 猪の顔にクリーンヒットした!


 吹き飛ばされ木に叩きつけられた猪。

 地面に倒れ動かなくなってしまった……。



 「ホーク!大丈夫!?」

 ホークの身を案ずるリース。

 「ああ。だが騎士の兄さんには

  気の毒をしたな……」

 息絶える騎士を見つめ、言葉に詰まる2人。


 「やっぱり伝説は本当だったみたいだな」

 ホークの言葉にリースは無言で頷いた。

 「2人で力が違うのは、

  実を半分にしたからなのか?」


 「分からない……」

 首を静かに横に振るリース。

 「でも……」

 「ん?」



 「あんたは攻撃。私は防御。

  お似合いじゃないかしら……?」

コメント、評価宜しくお願いします!!

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