不活姫アトム ②
アトムに乗っ取られたリース。黒い盾を4つ出現させると、高速回転させながらホークへ飛ばしてきた!
「ホークさん!前!!」
シャルロットが飛んでくる盾に向かって指を指した。
「危ねえ!」
慌てて盾を殴るホーク。盾は砕け散り、地面へ落ちて消えた。
「……お前……その力は何だ?」
リースの声で語るアトム。
ホークは無言で駆け出し、アトムを殴りつけようと拳を繰り出した!
「……ほう」
ホークの拳は空中に固定された障壁に囚われ、もう片方の手も穴の開いた盾で身体ごと固定されてしまった。
「は、離しやがれ!」
暴れるもビクともしない。
「種を吸収するまで、そこで見ているが良い」
アトムは静かに目を閉じた。
「ゴミムシ! 槍のイメージ!!」
突然シャルロットの怒号が響いた。
「シャル様!」
囚われたホークの手から白金の槍が飛び出し、障壁を突き破った!
「む、貴様も種を食べたのか?」
目を開けるアトム。
「道理で力が出ない筈だ。貴様ら2人で1つだったのだな……」
「だったら何だってんだよ……」
槍で身体の盾を壊すホーク。
「貴様も取り込んでやろう!!」
黒い障壁を展開させ、ホークへ向かうアトム。
ホークは白金の槍を構え、障壁を貫こうとする!
……キン……
僅かな金属音と共にホークの槍が止まる!
ホークの脇腹を、棘の着いた盾がめり込むとホークは槍の先に極小の黒い盾を見つけた。
「……ち、ちくしょう……」
脇腹に手を当てホークは後方に引いた。
「ふふ、その力は千年前に一度見ておる。まして半分なら他愛も無い事!」
「ふ、そうかよ……」
ホークは余裕の笑みを浮かべるも内心穏やかでは無かった。
「強がりを……言うなーーーー!」
極端に薄く、鋭い盾がホークへと襲いかかった!
「ガハッ!!」
キラキラと光る盾はその薄さから、目視することが出来ず、ホークは肩と足に致命的な傷を負ってしまった!
「ホークさん!」
慌てて駆け寄るシャルロット。
「凄い血!」
シャルロットは上着を脱いで傷口に押し当てるも、血の勢いは止まらなかった。
「そいつは終わりだ……」
ホークの前にしゃがみ込むアトム。
「リースさん!目を覚まして!!」
泣き叫ぶシャルロット。
「うるさいな」
アトムは盾でシャルロットを吹き飛ばすと、ホークの髪の毛を鷲掴みにした。
ホークの目には最早生気は残って居らず、死を待つのみであった。
「ああ……リース。護りきってやれなくて……ごめんよ……」
今にも消えゆきそうな小さな声。
「ん?何か行ったか?」
アトムは不気味に笑った。
ホークは静かに手を伸ばす。
「何だ、死に際の挨拶か?」
ホークは最後の力を振り絞り、緩い握り拳を作った。
「ふふ、安心しろ。死んでも種の力は吸い取れる」
ホークは僅かに微笑むと、僅かに残された力で軽く人差し指を弾いた。
「お?」
アトムを取り囲む黒い障壁。
ホークの指から現れた小さな小さな白金の光。
ほんの僅かな光が、黒い障壁を突き抜ける。
障壁に僅かに空いた小さな穴。
白金の光はアトムに気付かれること無くアトムの身体へ到達すると、身体の中で大きな光となり一気に背中から突き抜けた!!
「グハァ!!」
大きな光と共に、リースの身体から吹き飛ばされるアトム。
身体は散り散りになりながらも、その目には力尽きたホークの姿が留まった。
ゆっくりと起き上がるリース。
その目にまず映ったのは血だらけのホークだった。
「いや!! ホーク!! 起きてよ!!」
リースの服に、ホークの血が染まっていく……。
しかし、いくら呼びかけてもホークが目覚める事は無かった……。




