不活姫アトム ①
七色の黒い光が収まり2人が恐る恐る目を開けると、そこには全身黒い光沢を帯びた人影がいた。
「おお!この世の悪意を封じ込めし不活姫アトムよ!!」
魔女が腕を上げ、アトムと呼んだ人影を讃えた。
「我を……貴様が……呼んだのか?」
口を開くことなく発せられた言葉は、無機質で性別も特徴も無く、唯々冷たく聞こえた。
「え、ええ!私が封印を解いたのよ!」
笑顔で答える魔女の身体には大きな穴が空いていた。
「……え?」
そのまま倒れる魔女。棺の周りには鮮血が広がった。
「逃げるぞ!」
ホークはリースを抱えたまま、シャルロットへ合図した。
「……まて」
その声に反応するかの如く、神殿の入口が閉まる。
「何!?」
慌てて振り向くと、アトムは2人の目の前に居た!
「う、う~ん……」
ホークに抱えられていたリースが目を覚ます。
リースの目に映るアトム。
「きゃああ!!だ、誰!!」
ドゴッ!とリースの盾がアトムの顔にヒットする。
アトムはびくともせずにリースの盾を掴むと、不思議そうな顔をした。
「この力……神のタネか。……それにしては弱々しい……」
アトムが触れた盾はブスブスと紫の煙を出し、ボロボロに崩れ去ってしまった。
「え?え?」
状況が読めないリース。
「リース!動くなよ!」
リースを抱えたままホークは走り出した。その後ろを面白そうにアトムは追いかける。
「ホーク!アレは何!?ここはどこ!?」
「ここはクリプトンの古神殿だ!アイツは……知らん!魔女が蘇られた何かだよ!とにかくアイツを何とかしないと俺達の命は無い!!」
ホークすら状況を掴めておらず、目覚めたばかりのリースには何が何だかさっぱりだった。
しかし、棺の前に広がった血の海に横たわる魔女を見ると、この状況がとても良くないことだけは分かった。
「ホーク!降ろして!」
「え!?」
「早く!!」
リースはホークの腕から降りると、大きく深呼吸し手を前に出した。
一瞬で3人を包む白金の障壁。その硬さはホークが一番知っている。
「これで来れないでしょ!」
しかしアトムはリースの障壁を、幽霊が壁をすり抜けるかの様に無視し、中へと侵入してきた!
「えっ……!?」
リースの顔が絶望の色に染まる。
「面白い女だ」
アトムはリースの胸に手を当てた。
ズブズブとアトムの腕がリースの身体へを入っていく。
「止めろ!!」
ホークの拳がアトムの頭を捉えた!
「きゃあああ!!」
しかし、ホークの拳に反応したのはリースだった!
「中々のパンチだが、もうこの女と私は共同体となった。私への攻撃はこの女へのダメージとなるぞ……」
アトムの身体の殆どがリースの中へと入ってしまった。
「く、くそ!!リースをどうする気だ!!」
「この女の体内に眠る神の種の力を頂く!そして千年前の借りを返すのだ!!」
完全にリースの身体へ入ったアトム。リースの瞳はドス黒く染まり、この世の悪意を一身に受けた悲しい表情へと変貌した!
「ホークさん!!」
「くそ!どうしたらいいんだ!!」




