ニッケル森の黄金蟲 ③
だいたい週1更新でお送りしています
熱帯地方のジャングルさながらに入り組んだ森の入口は、神秘的な誘惑と破滅的な匂いを漂わせながら、2人を歓迎する様に木々がざわめいていた。
「これが……ニッケル森」
シャルロットは、これから立ち向かうであろう自然の驚異に足が竦みそうになるが、後ろで物欲しそうに佇むホークに鞭をくれ、先へと行かせる。
森へと足を踏み入れると動物の気配は無く、何かがこちらを覗っているような感じがした。
「おかしい、静か過ぎるよ……」
鳥のさえずりや、森に住む動物達の生活音さえも聞こえてこず、木々のざわめきだけが耳へと届く。
……パキ
何かが枝を折る音が聞こえる。
……パキン!
それは次第に大きくなり、2人は視界の悪いジャングルで音だけを便りに、音の主を探す羽目になった。
しかし、それは呆気なく見つかった。
何故なら、その音の主はジャングルに似つかわしくない金色で、見るに堪えない輝きを放ちながら、丸い身体を此方へと向かわせてきた!
バキバキバギ!!
枝を倒しながら、黄金色に輝く球体は2人へと加速していった!!
「シャル様危ない!」
ホークはシャルロットを庇うように前へ立ち塞がり、転がり来る球体を思い切り殴りつけた!
まるで金属を殴ったかのように鈍い音と共に、黄金の球体は進路を変えて2人の脇をそれていった。
大木にぶつかり止まるとその球体は割れ、中から無数の節足が現れる。元の姿へと戻ると、2人の気配を探ろうと忙しなく触覚を動かし始めた。
「金色のダンゴムシ……気持ち悪い」
シャルロットがぼやいた通り、その姿は紛れもなく巨大な黄金色のダンゴムシそのものだった!!
ホークは素早くダンゴムシへと近付くと、3発程身体を殴りつけるも傷一つ着かず、ダンゴムシは再び丸くなり力強く転がり始めた!
ホークは転がるダンゴムシを正面から受け止め、力一杯持ち上げ放り投げた!
ダンゴムシは木々を薙ぎ倒し、止まると再び転がり始めた。
「あのダンゴムシは一体……?」
「アイツの身体に幻魔結晶があります」
ホークがダンゴムシの頭を指差すと、おでこ?の部分にほんのりと色の違う三角の塊が着いていた。
「確かに強い幻魔粒子の力を感じる……」
シャルロットは幻魔結晶から空気中に放散された幻魔粒子の僅かな流れを読み取り、その結晶の強さを感じ取った。
「ゴミムシはリースさんの様に何か出せないの?」
「すみません……俺はゴミムシなので殴ることしか出来ません」
本当に申し訳なさそうな顔をするホーク。
「そう言えばリースさんのアレって何なの?」
シャルロットの問いにホークは迷わず答えた。
「神の種です」
まさかの答えに、シャルロットは息を飲んだ……。
「……本当なの?」
「はい、半分に割って2人で食べました」
シャルロットは、風の噂には聞いていた。
人智を超える力が手に入る神の種。
その式典が失敗に終わり、国の威信が傾いている事を……。
「このゴミムシ、国に追われた極悪人だったのね……」
シャルロットは顎に手を当て、少し考えた。
「半分ずつなら、アンタも何か力が備わっている筈よ!この状況何とかしなさい!」
シャルロットは力一杯鞭を振り下ろした。




