人質
鉱山から脱出する頃には辺りは暗くなり始め、お互いに酷く汚れた姿は笑えた。
一通り笑い終えた後、誰かの気配を察した2人は辺りを警戒した。
「ねぇ、ホーク。誰かに見られてる気がしない?」
「ああ、俺もそう思った所だ」
しかし、辺りを見渡しても特に変わった様子は無い。
すると、突然強風が吹き荒れ2人は目を開けることも出来ない程の風圧に耐えきれなくなる!
リースは障壁を展開するも、風に飛ばされボールの様にゴロゴロ転がっていった。
風が止み、ホークが目を開けると、そこには障壁ごとリースを持ち上げる漆黒のローブと、ローブ姿に赤いワンピースの魔女が居た。
「あんたらグルだったのね!!」
「ふふ、言ったでしょ?手段は選んでられないって」
漆黒のローブが手から電流を放つと、リースは痺れ動かなくなった。
「リース!!」
ホークが飛びかかろうとする。
「ふふふ」
怪しい魔女の瞳はホークの自我を奪い、ホークは一瞬の内に従順な僕へと変貌した。
「ここより更に西のニッケル森に、幻魔結晶が1つあるわ。取ってきて頂戴な」
魔女はホークの頭を撫で、耳元で囁いた。
「仰せのままに……」
ホークの目は精気を失ったかの様に暗く、静かに来た道を戻っていった。
「ふふ、お嬢ちゃんの障壁が消える前に帰るわよ」
漆黒のローブと魔女は、風と共に消えて行った……。
フラフラとゾンビの如く歩くホーク。
そこへシャルロットが偶然通りかかった。
「あ、え? ホークさん……?」
異様な雰囲気を察し疑問気に声を掛けるも、ホークからの返事は無かった。
「あ、あの!」
二度目の返事が無い事で、シャルロットはホークの異変に気が付いた。
「ホークさん!ホークさーーん!!」
必死でホークを揺さぶるシャルロット。
「……あ、魔女……様……」
ホークが虚ろな目でローブ姿のシャルロットを見た。
「? ホークさん、リースさんは!?」
ホークの表情からタダならぬ気配が漂う。
「……リー……ス?」
ホークは頭を傾げ、シャルロットをただひたすらに見つめた。
「ん?」
シャルロットはホークのポケットに何か紙が入っているのに気が付く。
――西のニッケル森で幻魔結晶宜しく。殺しはしないから安心してね♪――
「……リースさんが人質と言うわけなんですね?」
シャルロットはホークの顔を見るも、未だ焦点が定まっておらずフラフラと漂っている。
「とりあえず、ホークさんを正気に戻してから考えよう」
シャルロットはホークの手を引き、自分の小屋へと連れて行った……。




