ガリウム鉱山の火焔龍 ②
「ホーク大丈夫!?」
とっさに張った障壁の中でリースとホークはうずくまっていた。
「ああ、リースのおかげで助かったよ……」
ホークは障壁の中から辺りを見渡し、状況を確認した。
何かが通り過ぎた後には坑道にポッカリと綺麗に穴が空いており、障壁の中に伝わる熱量から、岩壁を溶かしながら何かが進んでいる様に見えた。
「何か居るけど絶対勝てないわ!逃げましょう!!」
ホークとリースは元来た道をひたすら戻り走った。
ひたすら走り、来た道を戻っているはずが見覚えの無い樽やトロッコ跡が目に入る。
「来るときあんな物あったかしら!?」
「ごめん!覚えてない!」
走り続けた先は行き止まり!!
2人は慌てて来た道を戻った!
坑道に響く轟音は止むことは無く、2人のそばを近づ離れず追いかけていた。
「ははは……迷子になっちまった」
2人は見覚えの無い大きな広間へ出た。
目の前の地面から、唸るような地響きと共に地面を溶かして走る火焔龍が姿を現し、全身に立ち込める炎が2人の皮膚を焦がすように熱く燃えさかっていた。
「熱い!熱すぎるわ!!」
リースがホークの後ろに隠れる。
「こ、こいつは殴れないぞ……」
ホークは凄まじい炎のエネルギーに物怖じしてしまう。
「私も防ぎ切れるか怪しいわよ!どうすんのよコイツ!」
2人目掛けて火焔龍が突進を仕掛けてきた!
リースは盾で軌道を逸らし、自身も横へ跳んで逃げる。
火焔龍に触れた盾は赤く染まり、今にも溶け出しそうな程に熱くなっていた!
ホークも横へ跳ぶが近付きすぎたのか、服が焦げて小さな炎を出していた。
「あちちちちちち……」
急いで転がり火を消しにかかる。
ホークがゴロゴロと地面を転がると、荷物入れから小さな水筒が転げ落ちた……。
「!!」
水筒が見えたリースの頭に、!マークがデカデカと浮かび上がった。
「ナイスよホーク!」
地面を転がるホークはそれどころでは無い。
火焔龍がもう一度此方へ襲いかかってくると、リースは正面から障壁を張った。
実体を持たないエネルギー体の身体がリースの障壁を通過する。
「……何とかなったわね」
火焔龍が通り過ぎた後の障壁は赤くなるも、熱が中まで来ることは無かった。
「ホーク!何時まで寝ているのかしら!? 一瞬で良いから動きを止めて!」
服に着いた火を消し止めたホークは慌てて立ち上がり、一瞬考えた後に地面を盛大に殴りつけた。
殴られた地面は大きく穴が空き、抉れた岩が火焔龍の進路を防いだ!
「行くわよ!」
掛け声と共に、リースは大きな球状の障壁で火焔龍を包み込んだ!
見る見るうちに赤くなる障壁。
「もう一つ!」
障壁を更に大きな障壁で包み込むリース。
暫く火焔龍が暴れる音がしたが徐々に音は小さくなり、やがて何も聞こえなくなった。
リースが障壁を閉じると、中から赤く染まった幻魔結晶が姿を現す……。
「何したんだリース!?」
ホークがリースに素直に尋ねた。
「これよ」
リースはホークの水筒を拾い上げた。
「障壁を二重構造にして、中を真空にしたのよ」
「へえ~」
「アンタ意味分かってないでしょ?」
冷えて色の戻った幻魔結晶を拾い上げると、リースは大事そうにポケットへしまった。
「今度はゆっくり戻れるわね……」
2人は出口を求め、坑道をさ迷い戻った。




