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攻撃力最強の俺。防御力最強のお嬢様。  作者: しいたけ
     国外逃亡
2/29

偽の種食べさせました

 城の門が開け放たれ、盛大なファンファーレが鳴り響く。


 門の中から王族や兵隊がずらりと列を成し、

 世界樹の元へとパレードの如く足を進める。


 世界樹では厳粛な雰囲気の元、神の種を頂く式典が執り行われていた。

 「神の力をその御身に――」

 儀式について大臣の説明がなされていた。


 リースは警備隊長の娘として、式典に参加していたが

 表情はどこかぎこちなかった。

 「リースよ……」

 隣にいた母親が話しかける。

 「は!はいっ!!」

 ビクっと身体が反応し、声が裏返る。


 「……そう緊張せずとも良い。

  と言っても無理はないか。

  なにせ千年に一度の事だ。

  かく言う私も緊張している。

  もっとリラックスなさい……」

 母親が穏やかな表情でリースを見た。


 (大丈夫かしら……。ばれてないわよね……)

 別な意味で緊張していたリースであった。





  ――あの日――


 「何も起きないわね……」

 「味もしないぞ……」

 2人はモグモグと神の種を食べ、飲み込んだ。


 お互いに異変が無いか探ったが、何も変化は見られなかった。

 「なーんだ、やっぱり伝説はただの作り話じゃん」

 手を後ろに組み穴へと戻ろうとするホーク。


 「おっと、そうだった……」

 ホークは再び木に登り、

 ポケットから木の実を1つ取り出した。


 「何よそれ?」

 「神の種をすり替えておこう。

  誰も見た事無いし、食べた事も無い。

  すり替えても分からないさ……」

 ホークは器用に木の実を世界樹に着け、

 穴に戻っていった。


 「ま、待ってよ……」

 静かに後を追うリース。

 振り返り世界樹の方を見るが、そこには神々しい神木があるだけだった。






 「そろそろよ」

 母親がリースに呼びかける。

 1人の騎士が名前を呼ばれ、世界樹の根本へと歩き出す。

 彼は国主催の剣術大会で3連覇の偉業を達成しており、

 この国一番の騎士として神の種を食べるに相応しい人間であった。


 騎士が国王の前に跪き、次に大臣が設置した梯子を登り、神の種を採った。

 国王の手に神の種が渡される。


 焦げ茶色のシワシワ神の種。

 騎士の手の上に置かれ、国王は静かに席へと戻る。


 そして、、、騎士が恐る恐る種を口へ運んだ……。



 騎士は苦虫を噛潰した様な顔をし、嗚咽(おえつ)した。

 何とか冷静を保とうとする騎士だったが口の中は苦く、

 喉は焼け、胃は拒否反応を示した。


 「どうだ……?」

 国王が騎士に問う。

 「……が……ゲホッ! オエェェッ……」

 騎士はその場で戻してしまった……。



 「なんと!!」

 会場は騒然とした。


 落胆し崩れ落ちる者。失笑する者。

 唖然とする者に目を背ける者。

 反応は様々であったが、人々の期待が大きかっただけに、

 英雄が誕生しなかった事に、会場は混乱の渦と化した。



 (罪悪感が半端じゃないわね……)

 リースの顔は青ざめ血の気が引いていた。


 「お嬢様……。

  顔色が悪ぅございます。こちらへ……」

 執事に連れられ会場を後にするリース。




 その夜、人々は意気消沈していた。

 リースは1人家を抜け出し、待ち合わせの場所へ向かった。


 「……おまたせ」

 そこには壁にもたれるホークが居た。

 「大丈夫だったかい?」

 ホークがリースの身を案じた。


 「流石に王族達は精神的にやられたみたいね……。

  お父様もショックだったみたい」

 リースの顔色が曇り俯いた。


 「俺たち何ともないだろ?

  どちらにせよ失敗だったんだ。

  気にする事ないさ……」

 ホークが笑顔で応える。


 「そ、そうね……」

 しかし、リースの顔色は戻らなかった。




 「例の騎士、投獄されたって」

 その言葉にホークの方へ慌てて振り返るリース。

 「な!なんですって!!

  なんの罪も無いのに……」

 リースの手が震えだした。


 「それを知ってるのは俺たちだけさ……」

 どこか寂しそうな顔をして遠くを見つめるホーク。


 「ちょっと!どうするのよ!!

  このままなんて嫌よ!!」

 思わず涙目になるリース。



 「……そうだなぁ。

  一つ提案があるんだけど、聞いてくれるかい?」

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