逃避行と魔女
2人は家の解約とホークは仕事を止め、足早にテルルを去る事にした。
馬を買い、明け方に人目を忍ぶように出発した。
「俺のせいですまない」
「いいのよ。早く行きましょ」
ホーク達は慣れない馬に跨り、インジウム山脈を目指す。
きっと巨鳥の口ばしか2人の力のせいで狙われたに
違いないと思い、魔女にも別れを告げなかった。
2人はインジウム山脈を越え、とにかく走り続けた。
夜はなるべく一目の付かない場所で静かに寝て、
朝になったらまた走り出す。
何日か過ぎた夜。ようやく街へと辿り着いた。
月が綺麗な夜だった。街の名はセレン。
2人は安著と疲労から、すぐに宿屋へと入る。
「久々のベッドね~」
リースはベッドへ横たわりすぐに寝てしまった。
「あまり無理はさせられないな……」
ホークはスヤスヤと眠るリースを
気にしながら眠りについた。
翌日、2人が出発しようとすると
宿屋の親父に話しかけられた。
「君たちは旅人の様だね。
ここから少し北へ行くと綺麗な湖がある。
デートするには持って来いだよ♪」
デートと言われ、
まんざらでも無い顔をするリース。
「ただし、森にある魔女の小屋には
近付いちゃダメだぞ」
続けて不吉なことを言う親父。
「魔女?」
2人は顔を見合わせて複雑な顔をした……。
「で? どうするの?」
「他に当てもないし、行ってみるか」
2人は北へ馬を走らせた。
確かに湖は水面に生える植物や
爽やかな空気でデートするには
持って来いだった。
(デートよ デート♪)
湖のそばを歩くリースの足取りは
ウキウキしており、とても楽しそうだった。
湖の近くには確かに森があり、
森の入口と思われる道には
『立入禁止』の看板が立っていた……。
「どうしてこんな所に住んでるのかしら?」
リースは不思議に思いながらも森の中へ
悠々と進んでいった。
「リース。気を抜くなよ」
ホークは周囲を警戒しながら慎重に進んだ。
森の奥には小さな小屋があった。
小屋の窓からは何か音が漏れており、
どうやら人が居るのは間違いないようだ。
カラカラ!カラカラ!
リースは足下に張られた紐に足を取られ、
引っ張られた紐が仕掛けを鳴らした……。
「誰ですか!?」
小屋からフードをすっぽりと被った
ローブ姿の少女が現れた!
「またアイツらですね!喰らいやがれ!」
ローブ姿の少女は右にあった切り株を踏んだ。
すると、リースの足下から網が現れ
リースはたちまち捕まり吊されてしまった!
「リース!」
ホークが叫んだ瞬間ホークの視界も上下逆転し、
同じく網に捕まってしまった……。
「へへん! 一網打尽!!」
少女が鼻を擦り嬉しそうに笑う。
「中々やるじゃない」
リースは盾の高速カッターで網を切り、
地面に降りた。
「なっ!何ですかそれ!」
少女は何が起きたか分からず、
慌てて左の切り株を踏もうとする。
しかし少女が踏んだのは白金の小さな障壁だった……。
「とりあえず……」
ジワジワと近付くリースに少女の顔が強張っていく。
「ひ、ひぇぇ……」
少女は恐怖におののき、腰が抜けてしまう。
「中、入ってもいいかしら?」
「へ?」
リースの意外な要求に少女は
目を丸くし言葉を失った……。
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