ホーク、家を借りる
リン湖から戻り、疲労困憊の2人。
食事もそこそこに眠りについてしまった。
「うへへ、……魔女さん」
楽しそうな寝言と嫌らしい寝顔を浮かべるホーク。
「う……ん…………ホーク……危な……い」
リースは夢の中でまだ闘っている様だ。
朝、朝食を取りながら2人は今後について話していた。
「まずは家を借りましょ。
私が家を探すからあんたは仕事を
探してきて頂戴」
パンに目玉焼きにソーセージ。
簡単な食事だが、パンにしっかりと付いた焼き目が食欲をそそる。
「え、俺だけ働くの?」
当然の疑問である。
「力仕事ならすぐみつかるでしょ。
私も落ち着いたら働くわよ!
何か文句あるの!?」
すごむリース。
「はいはいお嬢様……」
半ば諦めのホークであった。
「仕事決まった」
昼食にホークが宿へ戻ると、開口一番リースへ報告した。
「……早いわね」
予想以上の早さに言葉が見つからないリース。
「倒れて来た木を粉砕したら、
工事のオッサンにスカウトされた」
凄く簡単な説明だがそれが全てであった。
「……そう、あんたらしいわね」
リースは冷静にコーヒーを飲む。
「こっちもそれなりの家があったわよ。
これから契約しに行きましょう」
2人は食器を片付け、荷物をまとめお目当ての家へと向かった。
「あんたがすぐ仕事見つかったから、
家もすんなり決まりそうね」
リースは少し浮ついていた。
「ここよ」
リースが指差した家は、大通りから少し離れ小さな住宅が立ち並ぶ一角にある小さな一軒家だった。
決して大きいとは言えないが、2人で住むには十分な大きさだった。
中に居た大家の案内で、家の中を見る2人。
家具や食器は揃っており、今日からでも住めそうだ。
「いいんじゃないかな」
一通り覗いたホークは満足げな顔でそう答えた。
「あんたがいいなら私もいいわよ」
リースは1枚の紙をホークに渡す。
* 賃貸契約書 *
「へ?」
契約書に書かれた小さな文字を見て拒否反応を起こすホーク。
「仕事してる人じゃないと契約出来ないみたい。
あんたの名前で借りて頂戴な」
さらりと応えるリース。
「さ、さ。後はサインするだけよ」
リースはペンをホークに握らせた。
「まぁいいか」
ホークは考えるのを止め、契約書にサインをした。
「相変わらず汚い字ね」
ホークのサインに難色を示すリース。
「ほっとけ」
契約書を大家に渡し、正式に家を借りたホーク。
「今日からここが あんたの家よ」
リースはホークの肩を優しく叩いた。
それから2人は食材や必要そうな道具を買いに出かけ、気が付けば夜になっていた。
「すっかり遅くなったわね」
手ぶらのリースはらんらんと家へ上がる。
「女の買い物って何でこんなに時間かかるんだ?」
荷物持ちのホークは大量の荷物を抱え、ドシドシと家へ上がった。
買って来た物を整理し、簡単な食事を済ませた2人。
「屋敷と比べたらはるかに狭いけど、
これはこれで良いのかもね……」
リースが我が家を思い出し、どこか遠い目をした。
「まぁいいわ。今日は寝ましょう……」
とリースは1つしか無いベッドへと入っていった。
ホークはしばらく考え、床に寝ることにした。
「俺の家じゃ無かったのかよ……」
ブツブツと文句を言いながら眠りにつくホークであった……。
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