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攻撃力最強の俺。防御力最強のお嬢様。  作者: しいたけ
     国外逃亡
1/29

神の種食べました


  1000年に一度『神の種』と呼ばれる果実が世界樹に生る。


  食べた者は最強の攻撃力と無敵の防御力を誇り、


  英雄となる。と言われていた……。




 「こっちこっち……」

 手招きする青年。名はホーク。

 夜の闇に乗じ警備をすり抜け、巨大な世界樹の根本、地面の中を進んでいた。


 「ちょっと何でこんなに狭いのよ……」

 高貴な衣装に身を包み、頭を擦りながら狭い穴倉を進む娘。名はリース。 


 「仕方ないよ、俺一人で掘ったんだから……。

  2年かかったんだよ!」

 人がようやく通れる程の狭いトンネルをホークとリースは進んでいた。


 「私が警備図を渡したんだから、私の方がお手柄よね!」

 偉ぶっているが、折角の衣装は土塗れになって台無しだった。


 「はいはい、ありがとうございます……っと」

 ホークは頭上の土を、置いてあったスコップで崩した。



 「よっと……」

 ホークが地上へ顔を出すと、辺りを見渡し警備を確認する。

 「へへっ、予定通りだ」

 ホークのそばには巨大な世界樹が立っており、その神々しい佇まいは夜でも変わらない。


 「ほら……よ」

 ホークが手を貸し、リースを地上へ引き上げる。


 「うわぁ……きれい〜」

 世界樹の美しさに見惚れるリース。


 「よし、神の種を探そう」

 ホークとリースは目を凝らし、夜の世界樹を見渡した。

 「私世界樹をこんなに近くで見るのは初めて……」

 「そりゃあそうさ。

  ここ数十年と立ち入りが禁止されてるからね……」


 「何故ここには警備兵は居ないのかしら?」

 「神の種を見たら食べたくなるからだろう」

 「そんなに魅力的かしら?」

 首を傾げるリース。

 「伝説が本当ならね……。

  俺も半分以上は信じてないけど」

 呆れながら木に登るホーク。


 「登って誰かに見つからない?」

 「大丈夫さ。こっち側なら城から見えない」

 「ふーん、一応あんたも頭使ってるのね」

 「はいはい、オホメニアズカリコウエイデス」




 「……ねぇねぇ、アレ……じゃない?」

 リースが指差した先には小さな木の実らしき物が生っていた。


 「どれどれ」

 ホークが木をつたって近づく。

 手を伸ばし採ろうとするが、中々届かない。

 「ぐ……ぬぬ……」


  ずるっ……ドスンッ!!


 足を滑らし木から落ちたホーク。

 「大丈夫?」

 リースが慌てて駆けよった。

 「いてて……ほら」

 ホークがリースの前に茎の付いた小さな実を差し出す。


 世界樹の葉の様に綺麗な新緑と水々しい光沢を放つ実は、

 小さいながら何とも言えない不思議な輝きを放っていた。


 「さくらんぼみたいね」

 「ああ……緑のさくらんぼだな。

  これが本当に神の種なのか?」

 思っていた物と違ったのか、少々肩を落とす2人。


 「で、どうするの?」

 ホークの顔を見るリース。

 「食ってみるか?」

 冗談半分と言った感じでリースに笑いかける。


 「……いいわよ」

 「え、本当に?」

 まさかの答えに戸惑うホーク。

 しばらく考え、重い口を開いた。


 「いや、俺が食べよう……。

  何かあったら大変だ」

 実を口へ入れようとするホーク。



 「待って!」

 ホークの手を押さえるリース。


 「……二人で食べましょう?」

 リースは実をホークの手から奪うと、

 ポケットに入れていたナイフで2つに切った。


 実は種も無く全部が果実だった。

 中身は白く、何の変哲も無いただの実の様だった……。


 「はい」

 半分をホークに渡す。

 「更に小さくなったな」

 受け取った半分をまじまじと見つめるホーク。


 「じゃあ、せーの。で食べるわよ!」

 お互いに顔を合わせる笑う。


 (伝説が本当なら、誰にも負けない力が欲しい……)

 (ここまで悪の片棒を担がせちゃったわね……。

  いざって時はあなたの事は私が守ってあげるわ……)


   『 せーの!! 』



  この日、2人は神の種を食べた。



読んでいただきありがとうございます。

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