神とまともに会話できるとか本気で思ってんの?
「……あれ?俺、生きてるのか?」
真っ暗……いや、違う。
自分の姿は何の問題もなく見ることが出来ている。
血まみれでぼろぼろのパジャマの姿なんて見たくはなかったけど。
ここは、背景とでも言うべきか、それが真っ黒というだけで暗くはないんだ。
光源に当たるものはまったく見当たらないけど……。
「おーい、誰か居ませんかー?」
居たら怖いけども。
「は~~~い、どなたかな?」
「うぉうっ!?」
後ろから聞こえてくる、老婆のような声に思わず飛び上がる。
声のした方に振り向くと、そこにはバケモノとしか言えないようなモノが居た。
「おやおや、お疲れになったじゃろう?ほれ、おあがんなさい」
田舎のばあちゃんみたいなことを言うそのジイさんの頭は、額から上が果てしなく伸びていた。
まるで、肌色の薄っぺらな壁……柱……?が天高く伸びているようにも見える。
「いえ、あの、なんでもないです」
「ようこそ!ここはマルメンテの村です!」
「急に青年の声とかやばすぎ。その年で声変わりとか生涯現役かよ」
しかもこのジイサン、ちょくちょく頭が横回転したり肌の色が真っ黒、黒人とかそういうレベルではなくてもう、ホントにインクをぶちまけたような色に変色しては戻ってを繰り返している。
「貴様ァ!名を名乗れ!」
いきなり怒鳴られてしまった。
うちの高校の担任に古田って言うのが居たなぁ、敬語使ったらキレて、タメ語使ったらより一層キレて、シカトしてると脳血管が切れるほどキレるというクソヤバい先生だったけど。
それにそっくりだわ、このジイさん。
「えぇっと、木村幸一――」
「なるほど、名前を入力してくださいと言うのか。中々いい名前だな、大切にするがいい」
「どこがだよ。てかなんだよ、名前を入力してくださいって。ゲーム開始時のネーム設定のときにうっすらと書いてあるやつじゃねぇか、オイ。一文字でも書いたら消えるような儚さじゃねぇか、オイ」
「名前を入力してくださいさんですね!ようこそ、パルメの村へ!温泉にでも浸かってテメェよくもやりやがったな!?ぶっ殺してやろうではないか世界の半分を助けてくれぇ!死にたくありがとう!街を救ってくれたお礼だ!受け取って死ネェッ!!」
「声変わり激しいっすね。体質?」
おっさんだったり少女だったり若い兄ちゃんだったりと、声帯の妖精さんが過労死しそうだ。
しゃべってる間にも、目の前のご老人は宙に浮かんだ複雑骨折団子になり、そうかとおもえばビシッと姿勢を正したり、逆立ちしながら万歳したりと元気に動いている。
五体大満足にもほどがある。
意思の疎通を放棄し、一人でごちゃごちゃしゃべり続けるご老人を眺めていると、俺の体が輝き始めた。
何事かと思っていると、視界は完全にホワイトアウト。
意識も少しずつだが薄れていく。
このときの俺は、まさかあんなにぶっ壊れた世界を目にする打なんて思わなかったんだ。