魔王はノックしない
俺は六階層に行こうとした。
しかし、階段の先に扉がある。
地上に戻るゲートではなく、家にある普通のドアだ。
とりあえず俺は扉を開ける。
普通の民家っぽい室内だ。
「ちょっと、ノックはしようよ。魔王さん。」
元気な声がとんできた。
そういえばノックをしていない。
まあ過ぎたことだ。
それ以前に問題がある。
元気な声を発した青年、その人から既視感、いや、惹かれる感じ。
勇者か魔王だ。
「お前はどっち?」
「ああ、俺は迷宮の勇者さ。ダンジョンに魔王が入ったと聞いて、慌てて帰ってきたんだよ。」
なるほど、勇者の方か。
「で?魔王さんはなんできたの?」
「そこにあったから。」
「魔王さんはダンジョンマニアか?とりあえず欲しいものとかないの?一応ここが最奥だから。」
「欲しいもの...」
欲しいもの...か。
俺にはないが、クラルテとプロミネはどうだろう。
クラルテは可愛いもの。
プロミネは火炎だから石炭か?
そういえばこの前、クラルテに風鈴を貰った。
本に「三倍返しは当たり前」と書いてあった。
「風鈴の三倍は価値のあるもの。」
「は?また難しいものだな。うーむ...」
そういうと勇者は魔法を使った。
そして指輪を造りだした。
それを俺に渡しこう言った。
「ほれ!アレキサンドライトの指輪だ。魔王さんはカッコいいからモテるだろ?だからアクセサリーにしたよ。」
「ありがとう。」
「おう、元気でな。」
俺は勇者と蟲とスライムに見送られ、地上に戻された。




