魔王は眠れない
気まぐれにね
部屋に入ると、クラルテは荷物を部屋の隅に置いた。俺は何も持っていない。
「魔王様!今日は疲れましたね!もう寝ましょう!」
俺は全然疲れていない。
「私はこっちのベッドを使いますので、魔王様はそっちのベッドで寝てくださいね。」
クラルテはそう言いベッドに潜る。
俺もクラルテがいない方のベッドに横になる。
しばらくすると隣のベッドからスー...スー...という規則正しい寝息が聞こえてきた。
俺は目をつぶっても眠気がこない。
寝られないのでクラルテのそばに行き、どういう風に寝れば早く寝られるのか観察をした。
クラルテは茶色の髪で黒いねじ曲がった角が生えている。今は閉じているが瞳も茶色だ。
クラルテの今の体勢は、仰向けで両手が合わさるようにおなかの上に置いている。
クラルテの顔を見ていると頬が柔らかそうなのに気づく。
それに気づくと何故か触りたい衝動に襲われた。
俺は我慢せずにクラルテの頬をつつく。
むにっ。
程よいハリがあり、何度でも触りたくなる感触だ。
むにゅっ。もにゅっ。
続けて指と指で挟むように触る。
吸い込まれるような肌触りだ。
やはり何度も触りたくなる。
俺がクラルテの頬を触り続けていると、クラルテの目がパチっと開き、恐怖の眼差しでこちらを見た。
「ぃ......ひぃぃ......え?ま、魔王...様...?な、何しているんですか?!」
「眠れないので触っていた。」
「そうなんですか...頬を触られている感じがしたので驚きました…心臓に悪いです…」
クラルテは少し落ち着いたようだ。
「眠れないのなら本でも読みますか?」
クラルテがカバンから本をいくつか取り出し俺に渡す。
「魔王様って字は読めるんですか?」
ページを捲り字を見る。
「ちょっと待て…ああ、読める。」
「そうですか。私はまた寝ますので、魔王様は寝られるまで読んでいたらどうですか?」
「ああ、そうする。」
「そうですか。では、おやすみなさーい。」
あくび混じりに言い、クラルテは再度横になって寝息をたてる。
「本を読むか。」
俺はクラルテに渡された本を読む。
結局、俺は寝ずに一晩中、本を読み続けた。