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魔王は思う
俺たちは宗教国家リスマスを出て、南西の方角に進む。
「ヴェセル様!」
「なんだ。」
「次の目的地はお城なんですけど、その前に村を経由します。やっぱり旅は寄り道が基本ですよね!」
「そうか。」
「そうなんです。旅は道連れ酔わない酒ですよ!」
「ふむ。」
「旅は道連れ酔わない酒」は確か、人との出会いを大切にして情けをかける、という意味だったか。
「急がば回れとも言うじゃないですか!お城にまっすぐ行く道もありますけど、今回は村経由コースですよ!ヴェセル様!」
「ああ。」
俺はただクラルテについていくだけだ。
俺の道はクラルテに誘導されている、と思ってしまう。
だがそれも、クラルテなら大丈夫だと思ってしまう。
クラルテには何かを引きつける力があるのかもしれない。
「任せた。」
「任せてください!しっかりと手を握っていてくださいね!」
俺はクラルテの手を握る。
小さくて柔らかい手だが、何故か今は力強く感じる。
クラルテは強いな。っと思ってしまう。
そんな会話をしながら俺は頭を働かせる。
まだ村までは遠い。




