魔王は魔法が使える
気まぐれ投稿
会話は続く。
「魔王様!魔王様は記憶がないんですか?」
「ああ。魔王としか。」
俺は答える。
「そうなんですね。では、わからないことがあれば私に聞いてください!私は山の麓に住んでましたけど、お母さんに社会の常識だけはしっかり教わりましたから!」
「そうか。」
まだ何がわからないかわからない状態だが、必要な時は聞こうと思った。
「町に行って何をするんだ?」
わからないことを聞いてみた。
「はい!今向かっている町で、旅の準備をしっかりしようと思います。私の家のものだけでは少し心許ないので。」
そこでさっき気になったカバンについても聞くことにした。
「そのカバンはなんなんだ?」
「え...? あ、このカバンはですね、魔法のカバン、マジックバッグになってまして、いくらでも物が入るんですよ! お母さんにもらいました!」
説明不足気味の質問だったが、しっかり答えてくれた。
「魔王様ってしたいこととか、あるんですか。」
「俺の......したいこと......か......」
俺は答えた。
「ないな。」
「ない...ですか?」
「ああ、ない。」
俺には特に目的がない。
「じゃあこの旅で、目的を作れたらいいですね!」
「ああ。」
クラルテは歩く速度を魔王に合わせながら話す。
「魔王は世界中にたくさんいるそうです。私はあの家にしか住んだことがないし旅も初めてなのでわかりませんが、お母さんが言ってました。」
「そうか。」
「魔王たちは魔法が上手なそうです。
普通の人も魔法は使えますが魔王は規格外だとお母さんは言ってました。」
クラルテは続ける。
「魔王様はどんな魔法が使えるんですか?」
魔法......そんなものが使えるのか…...
確かに体の奥に何か力を感じる。
手を道沿いの木に向け、手から力を放つように意識する。
ガサガサガサ!!
木が大きく揺れた。
「俺は木が揺らせる。」
「....それだけですか。」
「ああ。」
クラルテは顔をちょっと残念そうにしている。
この力をもっと出せばもっと揺れそうだ。
手から放つ力を増やす。
ガサガサガサガサ!!!!
やはり木がさっきより大きく揺れた。
「やっぱり俺の魔法は木を揺らす魔法だ。」
「そんな魔法...聞いたことないです…。絶対ほかの使い道がありますよ!!」
「そうか。」
こんな会話をしていたら、昼前に町に着いた。