魔王は空気を澄ませる
俺は勇者教の教会の地下に連行された。空気が魔王教よりも若干悪い。
俺は今、胴体を教会の支柱に縛られている。
「この魔王め、わしが成敗してくれる!」
白い服を着た男が声を荒らげながら叫んでいる。本当に勇者教の者なのだろうか、筋肉が隆々で歴戦の戦士と言った風貌だ。
手には両刃の斧を持っており、斧の全長はこの男と同じぐらいで、二メートル程だろうか。かなり重そうだ。
ちょっと質問する。
「勇者も何人もいるのか?」
「ああ!魔王どもと同じでたくさんいらっしゃるわ!」
「そうか。」
「そんなこと今はどうでもいい。そぉりゃぁー!!」
男が斧を俺に向かって振りかぶる。
そして俺に当たった斧は、
ガキんっ
俺の肌にあたり、弾かれた。
俺は斧が当たったところを触ってみる。
柔らかい。金属が硬いものとぶつかったような音がしたが、肌はなんともなかったかのように柔らかいし傷もない。
「ええい!小癪な!おいお前らあれを用意しろ!!」
「「「ははあ!」」」
白い服を着たその男の部下達が何かを持ってきた。
破城槌だ。先っぽは何故か尖っている。
「行くぞ魔王!覚悟ー!!」
破城槌が俺にあたる。
どんっ!!
そんな音が鳴り響く。
だが全然痛くない。
なぜだろうか?
「こやつめ!ええい!お前ら!こいつを水に沈めろ!」
「「「ははあ!」」」
白い服を着た集団が何か言っているがそろそろ時間だ。
「やっぱり空気は澄んでいる方がいい。」
俺はまた木を生やすことにした。
「木を生やす」という意思を込めて力を放つ。
ドゴッ バキバキ!
立派な木が生えた。やはり自然はいい。
白い服を着た集団が唖然としている間に、俺は胴体の縄をちぎりそそくさと教会の一階に行き門を開け、出る。
するとまた、クラルテが待っていてくれた。若干呆れ顔だ。
「もうヴェセル様、心配しました。大丈夫とわかっていても心配なものは心配なんですよ?さあ、帰りましょう!」
「ああ、ありがとう。」
俺たちはその日も宗教国家リスマスの宿に泊まった。




