魔王は木を生やす
俺はクラルテと離れ離れになり、魔王教の教会の地下に連れていかれた。
そして今、高台の豪華な椅子の上に座らせられている。
この部屋は地下なのに空気が澄んでいる。
「おお!魔王様。」
「「「「おお!魔王様!」」」」
「我々にご加護と力を!」
「「「「我々にご加護と力を!」」」」
こんなことが体感で3時間ほど続いている。
「おい。」
「はっ!なんでしょうか!魔王様!」
「お前たちは魔王がこの国に来る度にこれするのか?」
「はい!私たちは魔王様を崇拝しておりますゆえ!」
魔王は怒らないのだろうか?
「魔王は怒らないのか?」
「はい!三回に二回は死人が出ます。」
やっぱり怒るんだ。
俺はこれに飽きてきた。
なぜだろう。
少しイラつきを覚えた。
そういえばこの前の本で、「木を生やすと空気が澄む」と書いてあった。
今も澄んでいる空気をもっと綺麗にできるのでは?
考えは即実行だ。
俺は角と翼を生やす。
「おお!魔王様に角と翼が!」
「「「「おおー!」」」」
そして、地面に向かって「木を生やす」と思いながら、体の奥の力を放つ。
ぴきっ!バキバキ!バキバキ!
教会の天井を突き抜け、巨大で立派な木が生えてきた。こころなしか空気が澄んだようだ。
やはり角と翼がある方が魔法が強くなる。
俺は慌てている魔王教の集団を無視して一階に向かい教会の門を開ける。
すると、そわそわした様子のクラルテがいた。
「ヴェセル様!心配したんですよ!本当にもう!急に木も生えるし!気が気じゃありませんでしたよ!」
「そうか!」
そうして俺たちは宗教国家リスマスの宿に泊まった。




