魔王は運ばれる
俺たちは宗教国家リスマスに入った。
道は広く横道が多い。教会が多いためか、高い建物が何件もある。
「まずはやっぱり、自然平和教の教会に行きましょう!リスマスは大きいですから、教会も立派なんでしょうね!」
「ああ。」
そんなことを話していると、前から黒い服を着た男性がこちらをじーっと見てくる。数秒凝視した後、俺たちの方に来て、言った。
「おお!あなたさまは魔王様ではございませんか!ぜひ我が魔王教の教会にお越しくださいませんか!」
熱心な様子だ。
「むむっ!あなた魔眼でヴェセル様が魔王だって見抜きましたね?」
「そうですよ。私たちは魔王を崇拝することでこのような力を身につけたのです。」
「その魔眼はエレメント・ウイユ。あとから身につくようなものではありませんよ!」
「うるさいですねえ。」
男は懐から笛を出し、吹いた。
笛からは独特な高音が響き、建物の壁に反射する。
バタバタバタっ!
前後左右いろいろな道から同じ服を着た集団が現れた。
「お前達!若い男性の方が魔王様です!教会の地下にお連れしなさい。」
「「「「おおー!!!!」」」」
黒い服の人という波が、俺とクラルテの間を隔てる。
「ヴェセル様!ああっ!」
クラルテは波に呑まれて見えなくなった。
「夜には戻る。」
俺はそのまま、黒の波とともに魔王教の教会の地下に連れていかれた。




