魔王は姿を変える
俺たちは宗教国家リスマスに向かっている。そしてその門が見えてきた。
「ヴェセル様!もうだいぶ近くなってきましたね!」
「ああ。」
会話の中身もそのことばかりだ。
ちょっと話を変えてみる。
「クラルテ。」
「はい!なんでしょうか、ヴェセル様?」
「船の時の俺の姿、どうだった?」
「ああ、あの時のですね!あの時の姿は鋭くのびた二本の角とふわふわの一対の翼が生えていて、とてもかっこよかったですよ!魔王様って感じでした!」
「そうか。」
「はい。髪は白、目は緑で服装なんかも、角と翼以外はいつも通りでしたよ!」
「そうか。」
角と翼の感想を聞いたが、目が緑は初めて知った。髪は長いから視界によく入ってくる。一応結んではいるが、髪が長く、顔を動かすとどうしても見えてしまう。
今、角と翼が出せるか、やってみる。
にょきにょき、にょきにょき
当たり前のように簡単に生えた。
角を触る。つるつるしていて細長い。
翼を触る。ふわふわしていて羽を布団にしたい。
「わあ!やっぱりかっこいいですよ!」
「そうか。」
「そうですよ!」
元に戻るように念じると、どちらも霧のようにぼやけて、消えた。
今度は顎に角が生えるかやってみる。
にょき!!
生えたらしい。
「ちょ!ちょっと!ヴェセル様!それはおかしいです!おひげになっちゃってますよ!」
「そうか。」
元に戻した。おかしかったらしい。まだくすくす笑われている。
そんなことをしながら、宗教国家リスマスの城門をくぐった。




