魔王はミスする
朝が来た。
外が騒がしい。
俺たち3人は宿から出た。
俺がムカデと対峙した場所、つまりは家が壊れた場所に人が集まっている。
「昨日の夜、急に家が壊れたんだ!意味がわかんねえ!」
「俺の家もそうだ!寝ている間にこんなのになっちまいやがった...」
家を壊された人々が騒いでいるようだ。
昨日のムカデは悪いやつだ。
再度そう思った。
しばらくその様子を見ていたが、クラルテが俺に言ってきた。
「あの家直せませんか?」
家を直す。
普通なら建築が得意な属性の人たちが有料でやる仕事だ。
クラルテは無料で、と言いたいのであろう。
俺はどうやらクラルテに弱いようだ。
「やってみる。」
正直俺の勘では、俺の属性に合わない。
でもクラルテの頼みだ。
極力、家のイメージをはっきりさせて魔法を使おう。
俺は体の奥にある力を手に込めて、放つ。
ニョキ....ずごごごご
やっぱり普通の家はできなかった。
何ができたかと言うと、
樹洞のある大木。
そうとしか言えないものを生やしてしまった。
しかし、樹洞は綺麗で、生活に差し支えのない?家と呼べないこともない建物?だ。
俺にも訳がわからない。
そうだ。
一軒だからおかしいのだ。
紅一点を紅十点ぐらいにしよう。
「ヴェセル様...これは家なのでしょうか...?えっ!ちょっとヴェセル様!待っ...ああ...」
クラルテが何か言っていたが、俺は集中していて何を言っていたのか、聞こえなかった。
とりあえず紅十点にしてみた。
意外といいのでは?と思えてしまう。
山の地下に大木がある。
この世界は不思議が多い。
そう思った。
「ヴェセル様...ガテツの長、固定の勇者様に謝りに行きましょうか...」
クラルテの言う通りにしたのに、喜んでくれていない。
何がいけなかったのだろう?
「ヴェセル、やっちまったねえ。あたしも一緒に謝ってあげるから、ほらほら前に進むんだよ。」
なぜか慰められた。
もうちょっと常識が知りたい、改めて思う。




