魔王の決意
俺は考えていた。
世界樹の素の使い道についてだ。
俺にはこの種を扱えない。
だが誰ならば使えるか、わかる。
クラルテだ。
第六感のようなものが働いて、なんとなくだがわかる。
本当に、勘としか表しようのない、もやの中の仄かな灯りのような、そんな感じ。
俺の前で話し合っている二人に割り込み、名前を呼ぶ。
「クラルテ。」
「そうなんですよね!.....あっはい!ヴェセル様!どうしたんですか?」
「これをやる。」
俺は麻袋から取り出した世界樹の素をクラルテに託す。
「え?え?もしかして、くれるんですか?!」
「ああ。」
「本当に、ほんとーに!いいんですか?」
「ああ。クラルテしか扱えない。」
「そ、そうなんですか?とにかく、わかりました!私が責任を持って保管します!」
クラルテが張り切っている。
だが保管だけではなく、使って欲しい。
何かが俺の感情をくすぐる。
クラルテが手に持っている種の、その先を見てみたい、と。
「クラルテ。」
「はい!なんでしょう?」
「使え。」
「え?使っていいんですか?」
「ああ。」
「本当に調合の材料にしていいんですか?!」
「ああ。」
「やったー!!ありがとうございます、ヴェセル様!」
「よかったじゃあないか。」
クラルテは満面の笑みを浮かべ、スキップをしながら、腕をブンブン振っている。
プロミネも嬉しそうだ。
おれはそんな二人、特にクラルテを見て、思う。
こんな「平和」が続けばいいな、と。
俺は最近、自分のしたいことがわかってきた気がする。
プロミネには「クラルテを守る」と、その場限りの言葉だったが、今は違う。
しっかりとした気持ちで、思う。
俺にとっての平和を守る。
ただそれだけ。
多分これでいいのだろう。
旅の目的なんて。
鍛冶都市ガテツがある山を見ながら、そう思うのだった。




