一話
人類が滅亡して、数百年。
そこに残ったのは何にでも耐えられる不死身族だった。
食事も歳も取らない不死身族は、戦争で放った核兵器にも耐え
その何もない土地で一から再生した。
社会の秩序と、もう一度人類の暮らしを真似するために
それぞれに永遠の職をつけることにした。
ある人は電気屋の社長の役
ある人は、その人のお父さんお母さんの役。
ある人は小学校の生徒役。
そうやってまた一から再生し始めていた。
しかし、不死身族ではこの星の規模に対して少なすぎた。
彼ら彼女らは、永遠に生きられても生殖機能はないのである。
不死身族は己の国の経済が回り始めた頃、
人数合わせのためにハイテクなロボットを作ることに成功したのだった…。
人類滅亡から120年。
今日も女子中学校に通うハイテクロボットのミシルは、いつものように学校の校門をくぐった。
ミシルや他のロボットと不死身達の見た目の判別は、もはや不可能になるほどよくできていた。
感情の起伏もあり、動きもロボットとは思えない。
半袖の白い制服。黒髪で、胸まで伸びた髪の毛を垂らしたミシルは、目の前の光景に立ち止まった。
「おはよう!桃子!!」
「おはようー!!桃子さん!!」
彼女の後ろから校門を抜けて颯爽と歩いてきた女子は、この学校で一番の人気があった。
ボーイッシュで身長も女子にしては高く、なおかつ中性的な顔だ。
「おはよう。」
彼女が挨拶をすると、その場にいた女子中学生達は皆至福の顔をするのであった。
「…。」
ミシルはそれをただ見ていたが、最近彼女も桃子が気になるような気がしていた。
「おっはよー!!ミシルちゃん!!」
すると、彼女の背中を割と強く叩いてきた女子がいた。
「さきゅばすちゃん。おはよう。」
「おはよう!今日も可愛いね。」
緑の髪のさきゅばすは、ミシルに抱き着いて彼女の頬にキスをした。
そして、べたべた触りながら彼女が向いている方を見ると、悪そうにニヤッと笑った。
「ロボットのくせに恋でもしちゃった?」
「ううん。」
「おかしいな。ロボットにはそんな機能ついてないのに。」
「…。」
さきゅばすちゃんは不死身の子だ。
そういえば、さきゅばすちゃんは桃子さんに接近禁止令が出ている。
不死身族は、不死身と名乗っていながら致命的な弱点がある。
それは血の供給。
不死身族は一度に大量に血を流すと死んでしまう。
それも、血の種類には合う合わないがハッキリしていて、それも近くにいる人であったり、全然遠い場所にいる赤の他人と相性が良かったりする。
なので、生殖機能もない不死身族には血が合う人が一生を添い遂げる人となる。
二人とも同じ行動をして大量出血したら元も子もないけど…。
「桃子さんの血美味しかったんだけどなあ。」
さきゅばすは口元に人差し指を置いた。
人気者の彼女にはすでにパートナーがいる。
三つ編みで、センターわけの清楚な女の子。
それを分かっていながら、さきゅばすは彼女にいきなり襲い掛かって腕から血を飲んでしまった。
さきゅばすは不死身の血を飲む趣味がある。
もちろんこれは特殊な趣味だ。
「うふふ。私と仲良くしてくれるのミシルちゃんだけだから。」
と、腕にギュッと抱き着いた。