鬼面
殴られるなど、初めてのできごとであった。
普段、両親は温厚であり、自分にも昔から、他人を傷つけてはならないと説いていた。
その両親が、実の息子である自分に拳をぶつけた。信じられなかった。
「どうして!?僕が何か悪いことをした!?」
鼻から滴り落ちる血を右手で拭いながら叫んだ。
母は、父の服にしがみつき、おいおい泣いている。
父は、クズでも見るかのような目でこちらを見ていた。
襖の向こうでは弟がビクビクした様子でこちらを伺っている。
「お前はわしらの息子じゃない!!!!」
怒鳴る大きな声で、胸がドキリと跳ね上がった。
「いいよ!!出てってやるよ!!!」
そう言い放ち、外へ勢いよく飛び出した。
しかし、いくあてもなく、街灯が照らす暗い夜道を一人寂しく歩いた。
11月ということもあり、外の冷え込みは相当であり、上着を着てこなかったのをひどく後悔した。
と、前方から女性が歩いて来ていた。
この時間に出歩くとは、社会人だろうか、大変だな、などと考えていると女性はこちらの顔を見るなり、甲高い声を上げ、ハイヒールを履いたおぼつかない足取りで走り去った。
なんだ、失礼なやつだ。
若干苛立ちながらも、家に帰ることにした。
途中でコンビニにでも寄り、暖かいものでも買おうと思い、近所にあるコンビニエンスストアへ赴いた。
自動ドアの前にたち、反射してみえた自分の姿に驚愕した。
まるで、鬼なのだ。
醜く変形し、血のように紅く染まった皮膚、額からは角のようなものが二本、鋭く生えていた。
目には良くわかるほどに殺気を灯しており、その場で叫んだ。
その声でこちらに気づいた店員も同じように声ともならない絶叫を上げ、腰が抜けたのか、その場にへたれこんだ。
と、いう夢をみたんだ☆