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第42話 神器を求めて


 翌朝、勇者一行はルルファロの町を発った。

 結局のところ魔王の悪事を耳にする事は出来なかったが、話を聞く過程で神器の場所を知る事が出来たのだ。

 フェリ達は町から北東にあるというパルテラル山脈を目指しながら、行く先々で情報収集を続けることにした。


「マリアーナ! そっちへ行ったぞ!」

「承知致しましたわ! せいやー!」


 マリアーナの剣が胴を直撃し、対峙していた魔物が横薙ぎに吹き飛ばされる。

 爬虫類系の魔物であるリザードマンは、最後に一鳴きだけ呻いた後に動かなくなった。


(すごい威力……本当に修行したのね)


 どういう修行をしたのかフェリは聞いていないが、マリアーナの戦い方は剣技では無くなっていた。

 武器は変わらず青銅の剣だったが、刃では無く面で戦っているのだ。つまり、斬撃では無く打撃。

 剣を持つ者としては変わった戦い方ではあるが、魔物を倒したマリアーナの顔は自信に満ちていた。


「やりましたわ!」

「あと一匹ね。こっちは私が……きゃっ!?」


 フェリが対峙していたグリーンバードという鳥型の魔物が、抵抗するように大きく羽ばたいた。

 吹き飛ばされそうな風を受け、一行が少しだけ怯む……アイトが兜を押さえながらフェリに叫んだ。


「フェリ!」

「だ、大丈夫。今トドメを――」


 すぐに態勢を立て直し、魔術を放とうと手を突き出す。

 しかしフェリが魔力を放つよりも、早く――小さな光が一瞬にしてグリーンバードの胸を貫いた。


「! デュオ……来てたの?」

「うん。今来たトコ~」


 地面に伏したグリーンバードに刺さったナイフを見て、フェリはホッと胸を撫で下ろした。

 振り向くと同時にすぐフェリの横に着地したデュオに、今更驚く者はいない。

 彼が神出鬼没なのはヴェルヘルム帝国に入る前からなので、いい加減慣れたのだろう。

 忘れる程には間を空けない出現率は、まさに勇者一行の補欠と呼ぶに相応しい。


「最近忙しいんでしょ? 無理に来ることないわよ。今だってそこまでピンチじゃ無かったし」

「俺様がフェリに会いたいだけだから、気にしなくていいよ」

「そ、そういう事は言わなくていいってば!」


 デュオはヴェルヘルム帝国へ入ってからも、ポッと現れてはすぐいなくなる事が多い。

 元々ヴェルヘルム帝国へは仕事で来たのだから当然かもしれないが、その合間を縫ってまで来る理由は今や誰の目にも明らかだった。

 何故ならフェリにとっては困ったことに、デュオ自身が「フェリに会いに来た」という口実をハッキリ宣言する様になったからだ。

 そしてそれを面白くないと思う人間は、少なからずいる。


「おい、貴様」

「ん? 何、仮勇者クン」


 コソコソと兜の位置を気にしていたアイトが、厳しい顔つきでデュオに近付いて来た。

 相変わらず互いの名前を呼ぶ気は無い様だが、出会った頃と比べるとこの2人の関係も幾分改善された様に見える。

 ……少なくとも、フェリの目には。


「何故フェリにばかり会いに来る。貴様は彼女の何だ」

「旦那さん」

「う、ウソをつくんじゃない!」


(この2人、いつの間に打ち解けたのかしら……?)


 打ち解けたと言っても、仲良くなった訳では無い。

 だがデュオはアイトを「偽勇者」では無く「仮勇者」と呼ぶという譲歩を見せ、アイトもデュオが魔物にトドメを刺しても怒らなくなった。

 今までこの2人に接点など無かった気もするが、お互いに少しは認める部分があるという事なのだろうか。しかし、馬が合わないという点だけはどうしようもないらしい。


「少しは名の知れたアサシンだと聞いたが、フェリの気持ちを考えろ。つきまとわれて迷惑しているんだ!」

「迷惑とか何勝手に決めつけてんの。フェリは俺様のお嫁さんになるって決まってるんだけど」

「貴様こそ勝手に決めるな! そもそも結婚とは互いの気持ちが通じ合って初めてするものだ。清い交際を経て、婚約と言う名の誓いを立てる為に――」


(あれ……?)


 何やらアイトが結婚について云々と持論を展開し始めた時、フェリはマリアーナが静かに離れていくのに気付いた。

 フェリの気のせいでなければ、マリアーナはこの展開になると毎回席を外してしまう――デュオが来た時に限って。


「ねぇアイト。マリアーナが……」

「それをして初めて婚約が成立し、諸々の準備期間を経て結婚へと……ん? マリアーナ?」


 少し遅れてフェリの言葉に気付いたアイトが、周囲を見渡す。

 そして、少し先の岩にマリアーナが腰を下ろしているのを見つけて駆け出した。


「マリアーナ! どうしたんだ? 怪我でもしたのか?」

「あ、アイト様! 待って下さぁ~い!」


 リサはチラリとフェリ達を見たが、ここにいても仕方ないと思ったのかすぐにアイトを追いかける。

 マリアーナの手を取って跪くアイトとそれに割り込むリサを見た後、フェリは少し心配そうな表情でデュオを見た。


「ねぇデュオ。マリアーナと何かあったの?」

「マリアーナ? 誰それ?」

「……ブロンズのことよ」

「あー、あの人ね。さあ? 一回も話した事無いし」

「……そうよね……」


 相変わらず名前を覚えないのも仕方ないと思うくらい、デュオは他の仲間達と話さない。

 だからこそ、フェリにはマリアーナの態度に心当たりが無かった。

 ゲルトを旅していた頃は普通だったハズなのに、何故急にデュオを避ける様になったのだろう。

 フェリは不思議に思いながら、戦闘の為に脱ぎ捨ててあったローブを拾い上げて羽織り直した。


「ところでフェリ、なんか方向違くない? 首都へ行くんじゃないの?」

「え? ああ……北東のパルテラル神殿に弓の神器があるらしいから、一先ずそっちを目指そうって事になったのよ」

「ふ~ん。なら次に会えるのはもうちょっと先になりそうかな~。ちょっと西の方で仕事あるし」

「そう。……あ、じゃあ今渡しとこうかしら」

「ん?」


 思わず残念そうな声を出してしまったのを誤魔化すように、フェリは自分のローブを探る。

 そして昨夜魔法糸で刺繍したばかりの黒い布を、少しだけ照れながらデュオに差し出した。



---------



 その国が如何に平和であっても、裏側と言うのは必ず存在する。

 西大陸でもっとも栄える首都の街並みを背に、青い髪を後ろで束ねた黒装束の男が窓際に腰かけた。

 闇ギルドでは、無い――そんな場所へ行かなくても、この男には既に何人もの手下がいるのだから。


「やる気は買うが、暴れ過ぎだ。貴重な戦力を削った分の仕事が、お前に出来るのか?」

「ったりめーだ! こいつ等を殺ったのは俺だぜ、フリードさんよぉ!」


 しかし今、暗殺者フリードを慕って集まった配下は10人ほど減ってしまった。

 元々は使い捨てにしか考えていなかった、ただの取引相手でしか無かった白髪の青年によって。


「……アレを殺すなよ。以前の様な失敗は許さない」

「わかったっつってんだろうが! 黙って見てろ!」


 威嚇するようにその手に爆炎を滾らせる青年を、フリードはさして期待の無い目で見つめる。

 尊大な態度をとるのは構わないが、この短気な青年が生け捕りなどと言う繊細な仕事を出来るかは些か不安だった。


(俺が行った方が早く済む。だが今、あのお方の傍を離れる訳には……)


 少しの逡巡の後、フリードは青年に小さく「行け」と指示する。

 青年はそれを見て満足そうにニヤリとした後、隠密行動とは程遠い荒い足取りで部屋を出て行った。


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