実話……とあるファミレス。それがたたの風景になった瞬間
実話を元に小説にしました。お金は大事です。いいお店で食事をしましょう!
小腹が空いた。時刻は午後3時前。色々やることがあってこんな時間に食事をすることになった俺は、ある一件のファミレスに入ろうか悩む。このファミレス……それは以前、嫌な思いをしたことがある店だったからだ。
ある日の日曜日の昼下がり、店内に足を踏み入れる。親子連れの喧騒が響く中、何か俺に早口で説明をする店員。もちろんこの一種のサファリパークと化している店内だ。聞こえるものも聞こえにくく、俺は店員の声がよく聞き取れなかった。
だから店員に再度説明をお願いしようと声を掛けるが、店員は多忙でどこかへ行ってしまう。まあ、こんなこともあろうと思いレジの前でテーブルへの案内を待つ。だが、5分・・10分・・ステルススキル高くないんだけどな……店員は思いっきりスルー。うーん……仕方がないと思いつつ何かを補充していた別の店員へと声をかける。
「あのー……ずっと待っているんですけど……案内っていつですか?」
「あー・・ただいま今案内しますので……」
いやいや、それもそうだが、仮にも待たせているんだから『誠に申し訳ありません。ただいまご案内いたしますので、少々お待ちくださいませ』でしょ? 補充作業がそんなに優先なの? できれば後にしようよ……
しかも本人はうまく隠しているつもりなんだろうけど、『空気読めよ』くらいの感じで顔に出てるから……日本人ってそう言う空気を嗅ぎとる力は敏感だよ?
その結果悟った。
あかん……ここの店は味以前の問題だ……ファミレスでも好きだったのに……この対応はないわー……
子連れの親子が多いし、今日はタイミングが悪かったと思って帰るか。案の定、そのまま出て行っても店員は多忙な接客に追われてて、実際それどころじゃなかった。
そして、今日この時間帯。広々とした駐車場に停まっている車は計3台。駐輪所は……一台もなし。店内に客は……はは……俺を入れても……ざっと見た限り三組か。これなら落ち着いて食べれるな。俺の腹は『バッチこーい!』と唸っている。
店内に足を踏み入れると物腰の柔らかそうなおばちゃんが迎えてくれた。うん。前回とは違い、今度は気持ち良く食事ができそうだ。今回はちゃんとテーブルまで案内される。そして、おすすめのランチメニューを説明してくれたおばちゃんはそのまま下がる。
メニュー表とにらめっこをしつつ、決まったところでコールボタンを押す。ピンポーンとコール音が店内に鳴り響き、俺は待つ……待つ……待・・・・つが……来ない……
おいっ! またかー……ボタンを何度か押すが来ない。そしてボタンを見ると半分ほどめり込んでいる。若干壊れている? いや、でも一回コール音は鳴ったし来るよね? ここは連打だ! ポン。ポン。ポン。ポン。……鳴らないし……ポン。ポン。ポン。ポン、ピンポーン。
鳴ったよ! 何このクエスト? ただ注文するだけなのにこの試練は何? 実はBAD判定とか出てる? それとも選ばれし客? のみしか注文できないの?
・・・・えっと・・相変わらず店員は来ない……ぐるっと店内を見渡すと、おばちゃんがレジで他のお客さんの会計をしている。えーー!? 俺もっと前から呼んでいるのにそっちを先に対応するの? せめて『すぐに向かいますので少々お待ち下さいませ』の一言ぐらい言おうよ!
あかん……またか……ここで声をあらげても他のお客さんに迷惑だし、腹が減っているから余計にイライラして止まらない……こんな状態じゃ冷静にクレームが言えるかわからん。
しょうがない。楽しみにしてたがすぐに食事のできる定食屋が少し進んだ所にあるからそっちに向かうとするか。なんなんだよ全く! ぷんすこ! レジを通り過ぎる時におばちゃんの視線を感じたけど、謝罪の一言もないし、会釈もない。
まあ、ここでありがとうございましたとか? またのお越しを! なんて言われたらたまらんよ……そして、案の定……外にも出てこねぇ……とことん終わってるわ……
さて、定食屋の方に着くと滞りなく食事ができた。しかもご飯のおかわりができるのでお茶碗を持っていくと、新しいお茶碗でご飯を盛ってくれた。この既に空になったお茶碗でいいですよと俺は言うが……
『この方が美味しく食べてもらえるので、かまいませんよ』
洗い物が多くなるだろうに、気持ち良く笑顔で接客をしてくれるおばちゃん。最初からこっちで食事をすれば良かったと後悔した。気持ち良く食事をしてもらえる配慮。これこそが最高のサービスだと俺は思う。だからおかわりしたご飯は格別のうまさだった。
さて、腹も満たされ血糖値も回復してきた俺は、家に着くなりネットで店の電話番号を調べて電話をかける。二度も嫌な思いをしたんだ。クレームを言う権利くらいはあるだろ!
すぐに責任者を名乗る女性が出る。それが例のおばちゃんだった。
おうふ……おばちゃんしっかりせいよ……
向こうも俺のことだとすぐに気づく。まあ、ついさっきの出来事だし、本人もやってしまったと感じたんだろう。俺は声をあらげることもなく、なるだけ押さえて伝えたいことを言う。
コールボタンがおかしく(壊れて)ない? 呼んだら余りお客さんを待たせたらいかんよ。せめて謝罪の意味で軽く会釈するなり、お店の外に出て一言謝るなりできるでしょと……
無論向こうも『その通りでございます』と声質を聞く限り、反省の色が混もっていたのでそれ以上は言わない。ただ、俺は本部にもクレームするつもりだ。それでこの気持ちは治まるだろう。
早速クレームセンターの電話番号を聞き電話をかける。
『コールセンター××××が対応いたします』
凄いか細い声に小声。き、聞きずらい……それと無機質でやる気のない声……スマホ片手に対応している? それが俺が感じた対応した女のイメージだった。このままじゃ絶対何言ってるか聞こえない……
「すみませんがもっと声を大きくしてもらえますか?」
「はい。・・・・・・・・・」
はいと返事をするが向こうは黙ったまま。こちらが何も言わないから向こうも黙っている。恐らくこういったクレームはお客様が最初からガーっと言ってくるから、全て吐き終えるまで待っているのだろう。
でも俺は一度整理をつけてから電話をしてきている。このままじゃ埒があかないので、こちらから店舗で起きたことを説明する。
終始やる気のない相づちと空返事。この対応に腹が立つ。なのでただ相づちを打つので、少し喋るテンポを上げて俺はサラッと聞く……確かめる意味で……
「さっきから気のない返事だけどやる気がないの?」
普通のテンションで聞く。すると……
「はい・・・・ッ!?」
やっぱり……間をおかずに俺は責める。
「やる気がないってどういうこと?」
「違います。ただ相槌を打って答えただけで……」
おいおい。相槌を打つの意味わかっている? つまり適当に流していました。だからやる気がありませんって言ってるも同義だし、聞いてて相槌を打ったって十分に失礼だよ? 何を考えているの? スマホをやっと置いたの?
あれこれ言い訳するが、一つ一つ理詰めで応答していくと向こうが言い放った一言は衝撃だった……
「お客様の言う通りです」
おいおい……認めちゃたよ。クレーム対応にやる気ありません宣言。凄いよ……クレームセンターなのに客をバカにするって……
すぐさま責任者に変わるように伝える。変わった相手は終始マニュアル通りに謝罪するだけ。誠意の欠片なんて微塵も感じない。この手の対応をしてる責任者ですら、この不始末に何も言えないようだ。
「そちらからは何も言えないでしょうからとりあえず、クレームセンターのクレームを言うには何処に掛ければいいの?」
クレームセンターの不祥事をクレームするのにクレームセンターに掛けるバカはいない。子供でもわかる通理だ。クレーム処理が機能してないんだから。そもそもやる気がないんだから当たり前か。凄いよここのファミレスのクレーム処理力。と言うかこれで成り立っているのが流石としか言えない。大企業様は何でもありだな……
「!?・・・・いえ、その、クレームに関してはクレームセンターにて対応することに……」
アホなことを言っている。イレギュラーな事態が起きているのにまだマニュアルに頼る責任者。軽くため息を吐きたくなるのを堪える。
「それじゃあ意味がないでしょ? 店舗でのクレームを引き受けるから、この様なシステムを作っているんでしょ? なら、クレームセンターのクレームは、更に上の然るべき部署に上げなきゃダメでしょ?」
でも、あーだ、こーだと言うので俺は問う。俺の言ってることに間違いがあるのか? あるなら言ってくれと。すると渋々本社の窓口の番号を教えてくれた。
そして一旦電話を切り、教えられた番号へ掛けるとファミレス本社の窓口へと繋がる。簡単に詳細をかいつまんで事の次第を説明すると、別のところにまた回線を回される。
「クレームセンター長の××××です。この度は……」
ふぁ!? いやいやいや。説明聞いてた? なんかあれこれ言っているけど用はタライ回しってことか。
「俺言いましたよね? クレームセンターが起こした不祥事をクレームとして上げるために電話番号を聞いたのに、対応する気あるの?」
「いえ、クレームに関してはクレームセンターで対応……」
「そんなことは聞いてない。それにハッキリと言えばこのクレーム自体を揉み消すと俺は考えているから。連絡先の番号を教えて下さい。バカにしてるんですか? 同じところにタライ回しにして。しかも対応にやる気がないってそちらが俺に対して言ったんですよ? わかってます?」
「わかっております、ですがクレーム対応はこのコールセンターで……」
「そんなことは聞いてない! 何度も答弁する気がない。対応するかしないかを聞いている」
「もちろんコールセンターで対応を……」
「質問に答えないと言うことは、俺の意見を聞いた上で対応しないと受け止めていいんだな?」
「そんなことはこざいません。御社ではクレームの対応はこのセンターで」
「そんな質問はしていないし、何度も言うが聞いてない! 俺はしないと受け取るぞ!」
「じゃあ! そう思っていただいて結構です!」
キレ気味に言いやがった。つまりこのファミレスは店舗で不手際が起こってもクレームは一切取り合わない上に、クレームセンターではやる気もないし、クレームセンターの不祥事は一切対応もしないとそう、この女はそう宣言したことに気づいているのだろうか?
俺は多少神経質なところもあるが、こう言ったクレームだって通理の通ってないことは言ったことがない! このファミレスは人の心を無下にする最低の飲食店。そう、この瞬間、俺の中で二度と足を運ばない店になった。
別にこのファミレスが日頃から、こんな接客対応をしているわけじゃないのはわかっている。たまたま運の悪いタイミングが重なって、こういう誰もが後味の悪いことになったのも、想像をすればある程度は理解できる。でも……この瞬間、俺は悲しくなった。
「わかりました!・・・・ツー・・・・ツー・・・・ツー・・・・」
学生の頃、少ないお小遣いでリッチなご飯を食べたかった。・・・・だから、安くてボリュームがあるファミレスと言えばここ○○○。俺の街は凄い過疎地だ。夜10時以降の飲食店なんて開いていなかった。
そもそも飲食店の数自体が少なかった。俺の街は川を挟んで向こう側は栄えている。だがこちらは田舎。長閑でいいなんて言う人がいるが、ずっと住んでる住人は自然よりもチェーン店を歓迎していた。
感傷に浸っていたが、気を取り直して俺は再び電話を掛ける。ファミレス本社に。再度電話に出てくれたのはまた同じ女性。クレームセンター長が逆ギレを起こし、電話対応をした件、並びにクレームセンターでの不祥事には対応をしないと明言した事を伝えると相手は困惑をする。
そりゃそうだ。職務放棄以外の何物でもないし、失礼の極みである。状況を把握すればクレームセンター自体がクレーム対応をやる気がないと答え、それに対して上への報告をさせない。(事実上の隠蔽と俺は捉えている。)だから通理の通らない説明を永遠と繰り返し受付ないと言う職務放棄……事実は小説より奇なりとはよく言ったものである。
この本社の受付のお姉さんは割りを喰っているわけである。だが二度目の電話。これ以上通理の通らない対応はしないでほしいと伝えると、その言葉をどう受け取ってくれたのかわからないが、この部署の上司が代わりに電話応対をすると答えてくれた。
早速相手が変わったので起こったことの詳細を簡潔に伝える。もちろん相手はそれに答えようがない。非礼極まるクレームを重ねた上にこのタライ回し。
そしてここでも対応が出来ないと言われる。元々ここはクレーム処理をする窓口でないから当然なのだが、案内されて掛けてきた以上請け負う責務はある。だから相手だって対応するのだ。
「事情は言った通りなんだから、そのまま内線で上司に連絡とりなよ?」
「こちらとしましても詳細がわからないので……」
「今の簡略な説明だけで十分でしょ? クレームセンターのオペレーターがやる気がないと明言し、そこのセンター長が不祥事に関しては対応しないと明言しているんだから? それ以上の何を聞く必要があるか今説明して?」
「・・・・・・・・」
「つまり、説明できないと言うことは簡略だけで十分と言うことを黙認しているということですよね? それに俺、何か道理に外れていることを言っていますか?」
「えー……ですがクレームは……」
もう何度も聞く呪文『クレームはホームセンターで』。この人は話を聞いてくれるけど……だけど、結局こっちが引くまで答えを出せないし、出さない。できることをしないしやらない。
「で、どうするの? クレームセンターが起こした不祥事はどこに連絡すればいいの? クレームセンター長は受付ないと言っているし……30秒で答え出して。○○○はクレームを無視する企業か、上への電話を繋ぐか。こっちの電話代もバカにならないし埒があかないよ」
「30秒ですか? 流石に30秒では……」
うん……俺も言い返されて冷静になる。ムリゲーだよね。だから、事実確認して電話を折り返ししてもらうようお願いする。正直言えば満足いく答えなどない。
客の気持ちをないがしろにし、やる気がないと明言するオペレーター。道理の通らない対応しかしない上に客に逆ギレを起こすクレームセンター長。
彼等に定食屋のおばちゃんの気持ちの一割でもあれば、俺も気持ち良く食事ができたであろう。
それから一時間ほど経つとクレームセンターを纏めるゼネラルマネージャーと名乗る女性から電話がきた。
俺は言う。客に不快な思いをさせ、クレームセンターはやる気がないと明言し、センター長は道理の通らない対応で客には無礼な態度を取り職務放棄。本社も一度クレームセンターの上にクレームを伝える必要がある旨を伝えたのに、結果はクレームセンターへ繋げタライ回し。
ここまで加速度的に客を不快にさせるコンボはない。究極の対応(失礼の極)ですねと言ってしまう。相手は徹頭徹尾、低姿勢で謝罪をしていた。 正直この人が可哀想である。聞けばこの方はこのクレームセンターを纏める責任者のようだ。ゼネラルマネージャーと言うのは部長か何かだろうか?
末端の不手際を尻拭いする上司。この人がいくら教育を徹底させてもヒューマンエラーや、その人個人が持つ常識までは変えることはできない。そもそもやる気がない発言など教育以前の問題だ。俺の次に腸が煮えくりかえっているのは実はこの人かもしれない。
それか、この手のケースを何度もこなしてきた人なのかも。俺の言葉にも合わせてくれるし、質問にもちゃんと受け答えをしてくれる。何より本質がわかっているように思えた。・・・・ここで俺はやっと話ができる人が来たと思った。楽しく食事する筈が……せめてもと思い小説にする。動画はどうしよう。
ようつべに流すことも考えたけど止めた。そもそも俺はあそこでただ気持ち良く食事をしたかっただけなのだ。あそこの周りは田んぼと民家だけの長閑な場所。あー・・・・近くに藍屋があるが、近くにある飲食店あそこだけだ。そもそも○○○はウォーキングに行くときに目の前を通る場所。よく幸せな顔をした親子連れの家族を見かける。
地域にずっと残ってほしい店なのだ。そのことも相手に伝える。すると相手からお詫びに優良券を贈ると言われたが、即答で断った。何度も言うが、俺は気持ち良く食事をしたかっただけだ。
それには払った金額の分、サービスを受けられると言う俺ルールがあるから。無銭の食事? そんなものはいらないよ!
お店は金額の分サービスを提供する。なら客は? 金額の分サービスを有りがたく受けとる。感謝を込めて。俺は客だからって神様だとは思わない。手を合わせ作ってくれた人に感謝し、フキンがあれば食べ終わった後もテーブルを拭く。
作ってくれた料理人やスタッフさんがいれば『ごちそうさまでした』『美味しかったです』と伝える。またお客の声や笑顔を受けてやる気を出してほしいと願うからだ。それが俺ルールその弐。互いがWINWINであれば最高じゃないか。
そこに生きた場が生まれるんだから。だから断る。もし本当に優良券を贈りたいと思うのなら、その気持ちだけで俺は既に満足した。それにこれからはあそこを通る度にまた笑顔が見たい。お腹を満たすと言うことは幸せに繋がる。
ゼネラルマネージャーさんはお店にまた来てほしいと言うが俺は断る。俺にとっての○○○はもう食事をするところではない。あそこから出てくる人の笑顔が見れればいいなと思うところ。
たまたまだ……つまらないことが運悪く重なっただけ。だけど俺は行かない。行けない。
だって、俺が求めるものがないから。俺は嬉しい配慮をしてくれる定食屋がいい。美味しかったですと言うと、満面の笑みで『またのお越しを!』と威勢良く声を出すラーメン屋の大将がいい。そう。本当に美味しいものは店に足を踏み入れた瞬間から味わえるものだから。
最後に言いたいことを伝える。一声掛ける。会釈をする。オペレーターはできればクビにしてほしい。やる気ありません……はい、だからね……改めて考えると凄いよ……
クレームセンター長は職務放棄だけど言っても無理だろうから言わない。代えがきかんだろうし……しかし凄いよな……クレームセンターの不祥事には対応しません!(逆ギレ)って……。
これを小説にするかどうか悩んだが、俺は書く。もう入ることのないファミレス。でも世間では憩いの場として多くの人が訪れる。そして、賑わうだろう。それでいい。あぁ……明日からもウォーキングで笑顔が見れればいいな。
○○○がただの風景になった……そんな1日だった。
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