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第二話 -意味の分からぬまま-

(落ち着けー、落ち着くんだ俺っ)

無理やり自分に言い聞かせ、刀を鞘に収めると辺りを見渡す。家にいた時は夜中だった筈だが、空は明るい。そこはやたらと古めかしい町で、町民も何故か浴衣みたいな服を着ている。

町は市場の様なものや住宅が広がっていて、割と賑わっていた。

……そう、目下の一番の問題はそれなのだ。賑わっている、ということは必然的に人が一定数はいるということ。その町民達の視線を俺は一身に浴びていた。

無理も無い、突然何も無かった所に光と共に人が現れたのだ。驚かない方が異常だろう。

「おい貴様!動くな!」

先程まで誰も俺に声を掛けようとせず遠巻きに騒いでいるだけだったが、簡易的な鎧を纏い、物騒にも片手に槍を持った男数人が前に出てくる。なんだっけ、銃刀法違反だっけ?に槍は含まれないんだ。初めて知った。

「貴様、何者だ?先程の光は何だ!」

男達は槍をこちらに向けると、質問を投げかけてきた。

「うぇ⁉︎おお俺は怪しくないっす、えっと、き、気づいたらここにいて!ちょっとよく自分でも分かんなくてーえーとっ」

俺の必死の弁解だが、余計怪しかったらしい。男達は訝しげにこちらを睨んでくる。

「……。もしや、魔化した人間か?」

「…いや、それなら言葉を話すことはできないはず……」

何やら話し合いを始めたようだ。俺の話は丸っきり無視されているということは分かった。早く解放してくれないだろうか。

立て続けに混乱することばかりで、いい加減落ち着きたい。

「……そうだな。おい貴様」

どうやら話は纏まった様で、声を掛けてきた。

「なんすか⁉︎」

「貴様をどうするか、王に判断を仰ぐ。付いて来い」

男達はそう言うと、急展開すぎてまともに抵抗もできない俺から刀を取り上げ、引きずってどこかに連行した。

引きずられていく途中で、やっと俺は脳みそが動くようになった。

(これ、逃げなきゃやべぇ⁉︎)

先程の話の流れからして最悪殺されるような気がする。それは何としても阻止したい。

だが、槍を持った男数人と戦うとか普通に無理だし、刀は……使えない上取られてる。

そこで気付いた。俺は今両腕を2人に片腕ずる持たれた状態で引きずられているだけ。今まで無抵抗だったのが功を奏したのか、男達は俺が抵抗すると思っていないのだ。刀も1人が適当にぶら下げてる。……よし、いける!

思い立ったらほんのちょっとだけ考えて即行動派の俺は、早速脱出を試みる。

「うおっ⁉︎」

よっしゃあ!目論見通り俺が抵抗するなど思ってもみなかったようで、勢いよく前に踏み出しただけで拘束は解けた。

(あとは刀だ!)

男達が油断している間に、刀を持っている1人に近づき、するりと奪い取る。上手くいった。

俺は今まで運動部で鍛えてきた身体能力に感謝をした。そのまま適当な方向に走る。

「っ!待て!」

静止していた男達も我に帰り、すぐに俺を捕まえようと追ってきた。

寝巻き姿のままなため裸足で走るのは結構痛いのだが、死と天秤にかけるほどのものでもない。

「追っかけてくんなあぁ俺なんもしてねえよおおおおお!」

「ふざけんな待てーー‼︎」

男達は鎧や槍が邪魔になって動きは遅い。行き止まりにでも差し掛からなければ逃げ切れるかも知れない。俺はひたすらに逃げる。

「はぁっ、はっ……」

いい加減息が切れてきた。奴らは思ったよりしつこく、一定の距離のまま引き離すことが出来ない。

これじゃ俺の体力がいずれ尽きて捕まる……と危惧した時だった。

想像した中で一番最悪の事態が起こってしまった。

目の前は壁、右も左も壁。つまりは行き止まりだ。後ろからは男達が迫ってくる。

俺は弁解を図ろうとするが、聞いてくれそうもない。俺は最後の悪あがきで刀を抜き相手に向けた。

少しは効果があったようで、いきなりはかかって来ず、じりじりと近づいてくる。

「刀を収めろ!大人しく付いて来い!」

「や、やだね!どっちにしろ殺されるんだろ⁉︎」

俺が大人しく付いてくる気が無いと判断した男達は、一気にかかってきた。戦った所で勝ち目は無いだろう。助けて神様ーー!

「…………え?」

一瞬黒い影が奴らの背後に現れた後、ドサドサ、と倒れる音がした。

俺は無傷で、遅いかかってきたはずの男達は、全員地面で伸びていた。今、一体何が……。

「よお、平気かい少年」

男達の後ろから、初老の男性が現れた。

「え、あ、大丈夫……」

とにかく、この男性が助けてくれた様だった。しかし、どうやって?

倒れている男達に目を向ける。生きてはいるのだろうか……。

「ああ、安心しな。峰打ちだから死んじゃあいねぇよ。流石に国の兵を殺すわけにはいかねぇからな」

そう話す男性の手には、片手ずつ、2本の刀が握られていた。薄々分かってはいたが、やはりここに銃刀法違反なんてないのだ。

「あ、あんたが助けてくれたのか…?」

「ああそういうことになるな。それより、こいつらが目を覚ます前にとっととズラかるぜ」

男性はニヤッと不敵に笑うと、顎で行き先を示す。付いて来いと言うことなのだろう。

無論、俺は怪しむことなどせず付いていった。


異世界突入と同時に新キャラ登場です!

もうすぐヒロインも出てきます

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