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第一話 -秘密の刀-

「おっじゃましまーす!じいちゃん!久しぶりー!」

祖父の家に入り、第一声。この家は古き良きって感じで好きだ。ずっとここに住んでいたいくらいだ。

「おお、夏か。久しぶりだな。どれ、身長は変わらんようだな?」

「うううるせえ!ちょっとは伸びた……かもしれねぇ…じゃん?」

身長のことはあまり突っ込まないで欲しい。高校に上がってからは祖父は異様に俺の身長をからかってくるのだ。別に特別低いと言う訳では無いが、平均と比べ多少低めなのは確かだ。いや、まだ俺は伸びるはずだ。そう信じることにしている。

「久しぶりですお義父さん」

「おじいちゃん久しぶりー」

「父さんただいま!茶!」

俺の後から父の陽二(ようじ)、蓮、母の紗江子(さえこ)の順に家族が入ってくる。母は相変わらず自分の父親にいささか横暴である。

「ああ、久しぶり。紗江子、お前は茶くらい自分で入れろ。老人をこき使うでないぞ」

苦笑混じりに言い放つと、祖父は俺に手招きをしさっさと二階の自室へ戻ってしまった。もちろん、新しいレプリカを見せてくれるのだろう。俺は心を弾ませながら祖父についていった。

「見ろ、夏。これがこの間電話で話した刀だ。これは珍しい形の刀でな、本にも大して載っていなかったもので、作るのは大変だったんだぞ」

そう言って祖父が見せてきたのは、あまり見ない変わった形の刀だった。

「うっわ〜〜!かっけぇ!」

「中々の出来だろう」

ふん、っと少し威張るような口調は祖父らしいなと思う。それにしても確かに凄いレプリカだ。本物かと勘違いしてしまう。

「触っちゃダメ?」

触ってみたくてうずうずして、身を乗り出しておねだりしてみる。

「駄目だ。お前はそうやって触らせたらすぐ壊すだろう」

一刀両断。デスヨネー。俺はもう既に階段から落としたりとかして2、3個作品を壊してる。その度マジギレする祖父はまるで鬼。怖すぎて小学生の時ちょっと漏らしたのは秘密だ。

ちくしょーもう高校生なんだし壊したりしねーし!……多分。

久しぶりに会った祖父は何も変わってなくて、俺は安堵した。

その夜、俺は中々寝付けず水でも飲もうと一階のキッチンに向かった。

「ふー…。そろそろ戻るかぁ……」

目的を果たし、寝室に戻ろうとした時だった。

「……あり?」

いつも鍵が掛かっていて入れない部屋の扉が、半開きになっているのを見つけた。来た時は閉まっていたような……気のせいだろうか。

その部屋は、祖父が何やら大事なものを隠しているらしく、出入り禁止にされている。俺が前に忍び込もうとした時はめちゃくちゃ怒られた。余程の貴重品でもあるのだろう。

ともかく、その部屋に入ってみる事にした。認めたくはないが俺だってまだまだガキだ。俄然好奇心が湧く。

(ちょっとくらいバレないよなっ)

そんな軽い気持ちで足を踏み込んだのだった。

その部屋は4畳半くらいの小さな部屋で、真ん中には部屋の3分の1位を占める大きめの箱が置いてあった。

「なんだこれ?」

怪しい。実に怪しいが、ここに来て何も無かったよりはずっと嬉しいものだ。

不用心にもその箱には鍵などは付いておらず、すぐに中身を確認する事ができた。

「重っ……」

袋で包まれた縦長の物体。それほどでは無いが想像していたより重量があった。恐らくこれが祖父が隠していた何かだろう。

(これ、なんだろ⁉︎)

興奮は収まらず、破かないよう気をつけて袋を開けてみる。

袋の下には、また袋。全く面倒臭い。だが、今度は袋ごしにも形状は伝わった。

「これ……、刀だ!」

大声を出してしまい咄嗟に口を覆うが、幸い誰にも気づかれなかったようだ。ほっと息をつく。

祖父の隠していたものが刀とは、やはりと言った感じだ。

だが、何故俺にも見せてもくれなかったのだろうか。

ドキドキしながら2枚目の袋を開ける。

「…………」

それは、綺麗に鞘に収まった日本刀だった。

言っては悪いが、あまり出来の良い刀とは思えない。正直ちょっとボロいのだ。

柄の部分には薄汚れた布が巻かれており、鞘も漆が剥げてきているのかザラザラしていて、手入れを怠っていることが伺える。

刀身が普通より反り気味なのは俺の好みだが…。

俺はこれは祖父の作ったものでは無い、と直感した。

だって祖父は自分の作ったものの手入れを怠ったりしない。祖父の作品は刀も鎧も、いつも全てピッカピカに磨かれていた。

(しかもなんか重いし……)

レプリカってプラスチックとかだからそんな重いはずは無いと思うが、長らく触れていないので俺には判断できない。

少し気が落ちるが、秘密の刀なのだ、他とは違うはず。きっと見た目によらず凄い刀なのだろう。

ともかく、一番の肝である刀身も確認しなければ。

鞘を引くと、スッと小気味良い音がして刀身が現れた。

「おー……」

まあ、想像してたよりは良かった。割とちゃんと磨かれていて、刃こぼれもない。

(意外とこの刀、貫禄あっていいかもな?)

……と、少し関心した、その時だった。

「う、わ⁉︎」

突如、刀身が眩い光を放つ。

目がくらむ程の眩しさに、俺は目を瞑った。その光は一瞬にして俺を包み込みーー。

気づけば俺は、全く知らない土地に立っていた。

「はあぁあ⁉︎」


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