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  (二)再会する姉妹

 ご要望通り、時計台に狙撃手を配備。管理棟の周辺を騎士団で固めてようやく、ブレイク伯爵は重い腰を上げた。

 動かざるを得なかった、というのが正しい。現在、塔に拘束されている人質は使用人一人。ブレイク伯爵としては人質もろとも抹殺してさっさと解決させたいところなのだろう。が、大橋の爆破は看過できない。ブレイク伯爵の生涯の功績になるであろう王都とパーセンを繋ぐ大橋だ。ここだけの話、記念式典で大橋の正式名称を「ブレイク」に定めると発表する予定だったらしい。

「ブレイク伯爵と共に僕達も塔の中に入る。あとは中の状況次第だが、相手が隙を見せたら合図を送り、騎士団に突入させる」

 作戦とも呼べない対策を告げるクレオンに、ジキルはいくつか丸薬に似た球を渡した。

「これが煙幕……で、これは閃光弾。どっちも強い衝撃を与えれば炸裂するから、床にでも叩きつけてくれ」

「また妙なものを」

 呆れつつもクレオンは、煙幕弾を受け取った。

「閃光弾は使うな」

「俺ならもう平気だぞ?」

「自意識過剰も大概にしろ。お前を心配したわけじゃない。また倒れられたら迷惑だと言っているんだ」

 それは『心配している』ということになっていないか。内心首をひねるジキルに、クレオンはもはや常套句となった台詞を吐く。

「くれぐれも、僕の足を引っ張るなよ」

「努力するよ」

「改善しろ」

 いつもの応酬を終えて、いざ塔へ突入。はやる心を抑えて階段をのぼる。クレオン、ブレイク伯爵、ジキルの順で、だ。

 向こうの要求は「ブレイク伯爵」であって「ブレイク伯爵一人で来い」とは言われていない。仮にもブレイク伯爵は領主だ。一人や二人、護衛がついてくることは犯人側も想定しているだろう、というのがクレオンの見解。かといって、大挙して押し寄せようものなら、ブレイク伯爵夫人が何をするかわからないので、まずは様子を見ることになった。

「奇妙とは思っていた」と、クレオンは呟く「伯爵殺害に失敗したので、今度は『大橋を爆破されたくなければ、伯爵自ら殺されに来い』と要求する――そこまではいい。かなりずさんな計画だが、筋は通っている」

 当の伯爵がいるというのに全く言葉を選んでいなかった。ブレイク伯爵の肩が一瞬竦んだのをジキルは見逃さなかった。

「何が問題なんだ?」

「人質」ブレイク伯爵が吐き捨てるように言った「使用人の人質なぞ無意味だ」

 どことなく不機嫌そうなのは気のせいではないだろう。ジキルは少し距離を置いて、歩くことにした。

「むしろ拘束して監視しなくてはならない分、負担が増える。だが、伯爵夫人はわざわざ使用人と共に管理棟にたてこもった」

 そうこうしている間に最上階に到着した。クレオンが扉のノブに手をかける。一度ブレイク伯爵とジキルの方を振り向いてから、扉を開いた。

 管理室には、ノト川と大橋を見渡せる大きな窓があった。太陽の日差しを受けて輝く青い川と深い緑の森のコントラストが美しかった。壮大な景色を背に出迎えたのは予想通りの二人だった。ブレイク伯爵と、使用人――だが、その状況は予想とは全く違っていた。

「いらっしゃいませ、ブレイク伯爵様」

 笑顔で出迎えたのは使用人の少女だった。

 その足元にひざまずく格好で拘束されていたのは、実行犯のブレイク伯爵夫人。恐怖に顔をひきつらせ、その目は『助けて』と切に訴えている。

 しかし、そんなことはジキルの眼中に入らなかった。『暁の魔女』もブレイク伯爵も大橋も人質も、遠くの彼方に吹っ飛んだ。

「……ル、ル」

「あら兄さん、こんなところで何してるの?」

 悪びれることもなく訊ねる使用人――ルル=マクレティは、短剣をブレイク伯爵夫人に突き付けた。

「悪いけど今、手が離せないの。長いお説教はまた今度にしていただけるかしら」


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