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  (七)自業自得の王子様

 来訪者は食堂の一席を陣取り、椅子に踏ん反り返っていた。ジキル達の姿を認めるなり不快を露わに鼻を鳴らす。

「まったくこの村は一体どうなっているのだ」

 開口一番、挨拶もなく文句が飛び出た。

「仮にも王太子が訪れるのだから村をあげて迎えるのが礼儀というものだろう。非常事態とはいえ出迎えの一つもないとは……挙句このような汚らしい小屋に案内するとは、非常識にもほどがある」

「で、殿下、そのくらいになさった方が……」

 唯一の付き添いであるサディアスがたしなめるが、遅かった。つかつかと歩み寄ったルルが招かれざる客ーーギデオンの前に仁王立ちした。

「はじめまして」

 恐ろしく感情のない声でご挨拶。ギデオンの襟を掴む。

「ご来店歓迎いたしますわ、王子様。ようこそ遠路はるばる辺鄙な『町』にお越しくださいました」

「な、何をする!」

「殿下には感心しております。よくもまあ王城が魔族の手に堕ちたというのに、こんな『食堂』で威張り散らしていられますわね。レムラ伝統の挨拶で歓迎と尊敬の意を表しますわ」

 細腕にあるまじき怪力で自分より背の高いギデオンを、ねじり上げる。レムラにそんな暴力的な挨拶があるとは初耳だが指摘する者はこの場にはいなかった。ぎりぎりと喉に食い込む拳にギデオンはひしゃげた声をあげた。

「ぐ、だ、だれか、こやつ……ぐっ」

 喉を締められながらも訴えるギデオン。しかし、婚約者を取られそうになったジキルはもちろん、キリアンにもギデオンを助ける義理はない。いつもならルルの暴挙を真っ先に止めるロイスも、ギデオンに食堂を汚らしい小屋呼ばわりされたばかり。残るはサディアスだが、この状況で高圧的にギデオン王子を解放するようルルに命じるほど彼も馬鹿ではない。

 ギデオンが自分で招いた結果だ。彼を積極的に助けようとする者は誰もいなかった。

「サディアス、無事でよかった」

 ギデオンを締め上げているルルを尻目に、ジキルはサディアスに声を掛けた。

「俺よりもジキルは大丈夫なのか? 怪我は?」

「心配はいらないよ」

 ジキルはサディアスの向かいの席についた。

「それよりも王都の様子を聞きたい。クレオンや国王陛下は無事なのか?」

「その前にこやつをぐえっ!」

「ほんとうるさいわね」ルルは眉を寄せた「ねえ、こいつ燻製箱に詰めてもいい?」

「他の肉が台無しになるのでやめてください」

 即座にロイスが止める。あやうく燻製になるところだったギデオンは何やら言いたげにしていたが、首がしまっていては声も出ない。

「二人とも止めるんだ。仮にも彼は王太子だぞ」

 キリアンが至極真面目な顔でルルとロイスたしなめる。

「燻製にしたって美味しくはない。それよりも身代金を貰った方が有意義だ」

 発想は同レベルだったが。

明日は『仰せのままに、スマホ様』を更新します。

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