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  (十二)暴かれた魔女

 アリーはすこぶる機嫌が悪かった。

 理由はわかっている。あの平民どものせいだ。卑しい下賤な者どもがせっかくの『プレゼント』をことごとく台無しにした。

(クリスは「仕留められなくても構わない」って言っていたけど)

 しかし二つとも退けられてしまうのはいかがなものか。

 アリーの手中で扇子が軋んだ。なんて忌々しい連中なのだろう。大した命でもないくせに惜しんで必死に逃げ回る。見苦しく、往生際の悪い――まるで羽虫のようではないか。

「こんばんは、お嬢様。ご機嫌はいかが?」

「今、忙しいの。消えて」

 突然現れたルルに見向きもせずにアリーは言い捨てた。

「あら、つれないわね」

 うるさい羽虫め。羽音を立てるな、耳障りだ。

「当代屈指の魔女様がえらく手間取っているじゃない。たかが下賤な民程度を相手に」

「うるさい。何で消えないの」

 手こずってなどいない。既に手は打った。あの猟師の親子が泊まっているという宿に『プレゼント』を贈った。今頃は爆発と炎で二人とも死んでいるだろう。

 そうでなければおかしい。百年に一度の逸材である自分が失敗するなど、絶対にあってはならないのだ。

「結局、あんたに出来るのは王子様に媚を売ったり、こっそり毒を盛ることぐらいなのよ」

「何ですって」

 アリーは振り返った。聞き捨てならない。

「アリーが、媚を売ったり毒を盛ることしかできないって?」

 怒気を向けられてもルルは薄ら笑いを浮かべる。アリーのことをただの子どもだと侮っているのがありありと伺えた。

 許しがたい屈辱だ。大した生まれでもなく、才能もない。ただ魔女から生まれただけの、凡人のくせに。下賎な民のくせに。どいつもこいつも――一体自分を誰だと思っているのだ。

「アリーは天才なのよ」

「へえ」

 小馬鹿にしたルルの態度に、アリーの頭に血が上る。扇を床に叩きつけて叫んだ。

「この国の王女様なのよ!」

「まだ、でしょう? あなたはギデオン王子と正式には婚姻していなんだから」

 指摘するルルの声音は優しげでさえあった。

「分はわきまえるべきですよ、リリア=ドナ=オズバーン男爵令嬢」

『アリー』は唇を震わせた。

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