(十七)憎くて可愛い妹
あけましておめでとうございます。
今年こそ拙作を完結させるべく進める所存です。(ちなみに長い長い十一章は次話で終了します)
よろしくお願いいたします。
寝る。そこで。クレオンと一緒に。ジキルは何度も目を瞬いた。
(いやいやいや)
相手は一国の王子(王女)だ。平民風情が同じベッドで寝るなんて許されるのか。不敬罪で罰せられやしないだろうか。
(なんでいきなり、そんなことを)
ベッドの広さは十分ある。枕も三つ用意されている。家族やキリアンとなら雑魚寝も平気でやっていた。異性というのも気にならない。しかし相手がクレオンとなれば話は別だ。残念ながら、そこまで彼と親しくなった覚えはなかった。
「どうした。男同士ならば、何の問題もないだろう」
クレオンは両眉を上げた。探るような眼差しを向けられ、ジキルは合点がいった。なんのことはない。試しているのだ。
(疑い深いというか、中途半端というか……)
この場で服を脱げと言わないだけ良心的だ。感嘆すべきはレオノーレに対する絶大な信頼。素晴らしい、さすがは母親の代から仕えている忠臣だ。
「いや、クレオンさえ良ければ、俺としてはありがたい」
上着と靴を脱ぐとジキルはいそいそとベッドに潜り込んだ。
「ほ、本当に寝るのか?」
言い出しておきながらクレオンの声が上ずった。
「助かるよ。正直、ソファーは翌日肩が痛くてさ。あ、そうだ。そこの枕、取ってくれ」
「って、おい毛布を引っ張るな」
こうなれば自棄である。ジキルは真ん中付近を陣取って寝転んだ。クレオンの肩が当たるが気にしない。ロイスはもちろん、キリアンとだって添い寝したことがある。雑魚寝だが。
「お前、少しは遠慮しろ」
誤魔化すように悪態をつくクレオン。しかし発端は自分であることは認識しているようで、渋々ながら枕をジキルに譲った。
ふかふかのベッド。思えば、パーセンに着いてから気を張り続けていたので、ゆっくり眠るのは久しぶりだった。
「他人と一緒でよく寝られるな」
「野宿よりはずっとマシだよ」
とは言っても、この王子様には野宿の経験も、誰かと一緒に寝たこともないのだから、理解しろというのも無理があるだろう。
「小さい頃は、ルルが雷を怖がって俺のベッドに潜り込んで来てた」
「想像がつかない」
「本当だって。あいつ好き嫌いも多くて、手のかかる子なんだ」
破顔するジキルに、クレオンは嘆息した。
呆れたのだろうかと思ったが、そうではないらしい。クレオンは天井を向いて呟いた。
「……僕には、妹の記憶がない」




