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Gナンバーの居候猫  作者: 小高まあな
第二幕 少女の心は猫の眼
4/14

2−2

 ぴろろん、と音を立ててケータイが鳴った。

『隆二! ケータイ!』

 新しい玩具を与えてもらった子どものように、ケータイをじっと眺めていたマオが焦ったような声をあげた。

「ん」

 なんでもないように頷いて、それを手に取る。手が震えそうになる。

『メールね!』

 横から覗き込んだマオが言う。新着メール一件と出ている。

「えっと」

『その真ん中のボタン押せばいいんだよ』

「わかってるよ」

 本当にわかっていたってば。今押そうと思っていたってば。

 そう思いながら、真ん中のボタンを押す。

 エミリからの返事だった。<Kbr>開くとそこには長文がずらりと並んでいる。

 え、さっきメールしたばっかりなのに、もうこの量の返信を打ってきたの? そのことに愕然とする。

 若者、怖い。

 メールの内容は、小さいつの出し方を懇切丁寧に教えてくれていた。ただ、ところどころバカにしたような言い回しも確認できたけれども。

 そして、最後に書かれている。

「お尋ねの件ですが、赤いと三倍速いんですよ?」

 三倍速い?

『赤い彗星だったのか……』

 横からそれを見ていたマオが、驚いたように呟く。

 え、なんで伝わってんの?

 全く意味のわからない隆二をほったらかして、マオはなるほどね、なんて呟いている。<Kbr>だから何が? なにこれ、ジェネレーションギャップ?

 困惑している隆二の顔をどう判断したのか、

『お返事しといた方がいいよ』

 マオがくすり、と笑って言う。

『わかった、だけでも。小さいつ、使うしね』

 戯けたように付け足す。まったく、余計なお世話だ。

 そう思いながらも、なんとか苦労して、わかっただけのメールを打つ。

 ああ、なんだろうこの達成感に疲労感。頼むから、嬢ちゃん、これ以上今日はメールしてこないでくれ。対応しきれない。

『おつかれさま』

 マオが笑ったまま、隆二の頭を撫でる。<Kbr>なんだかバカにされている気しかしないが、今回は本当、バカにされても仕方がない気がするので何も言わない。<Kbr>代わりに、目の前のマオをじっと見つめる。

『なに?』

 見られていることに気づいたのか、マオが小首を傾げる。

『今日もマオは可愛いよって? 知ってるー』

「言ってない、一言も」

 両手を頬にあてて、巫山戯て笑うマオは、いつもどおりのマオだ。

 Gナンバーの消失。それはマオとはきっと関係ないのだろう。きっとそうだ。

 だって、マオはすでに規格外なのだ。こんなに自由気ままに動くのはGナンバーとしてはイレギュラーなのだと、最初の時にエミリが言っていたじゃない。

 だから消えるなんてこと、あり得ない。

 そう自分に言い聞かせる。

 それでも、

「……なあ、体調とかどうだ? 妙に眠いとか、そういうこと、ないか?」

 一応聞いてみる。

 マオは、急に変な質問をされた、とでも言いたげな不思議そうな顔をしながら、

『女の子はそういうときがあるってテレビでみたよ』

 とんちんかんな回答をかえしてくる。

 ……また、そういうことばっかり覚えて。

 うんざりため息をつく。

 テレビに教育を投げっぱなしな俺がいけないんだよな、きっと。ちょっとだけ反省。

『眠くはないけど、ねー、隆二。お腹空いたぁー』

 甘えたように喉を鳴らして、マオが隆二の右腕を軽く揺する。

「この前食べてなかったか?」

『でも空いたのぉ! だから、行ってくるね?』

 軽く唇を尖らせてそう言うと、隆二から離れようとするマオを、

「あー、ちょっと待て」

 引き止める。

 なにもないとは思うけれども、万が一なにかがあったら困るから。心配だから。という理由は隠して、

「俺も行く。コンビニ行く、ついでに」

 言い訳を付け足しながら立ち上がると、

『本当っ!? 一緒に来てくれるの? やったぁ!』

 マオの顔がぱぁぁっと華やいだ。


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