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Gナンバーの居候猫  作者: 小高まあな
第六幕 猫の毛並みを確認すると。
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6−3

「マオ、離れろ、とりあえず」

 エミリと話している間もひっついたままだったマオに声をかける。

「えー」

 なんだか不満げな声が返って来た。

「話がしたい。隣座れ」

 そう言うと、しぶしぶとマオは隆二から離れた。が、隣には座らず、なぜかベッドに倒れ込む。それからなんだか楽しそうに枕をベシベシ叩き出した。なんなの、こいつ。

 例え実体化していたところで、行動は変わらず意味不明なままだ。

 そんな隆二を気にすることなく、マオは、

「ねーねー、あたし、戻っちゃうのかなー。どう思う?」

 枕を叩きながら問いかけてくる。

「……さあ?」

 実体化していることすらも想定外なのだ。その後のことなんてわかるわけがない。

「戻っちゃうなら、それはそれでしょうがないかなーとは思うけど。でも、その前にコーヒー飲みたいな! 隆二いれてくれる?」

「ああ」

「やった、楽しみ!」

 マオの浮かれた声。枕を抱きかかえ、ころんっとベッドの上を転がる。

「マオ、本当に大丈夫なのか?」

「うん! なんか変な感じだけど、平気! もうお腹も空いてないし、眠くもないよ!」

 よいしょっと、と体を起こしながらマオが笑った。

「そうか」

 それに安堵の吐息を漏らす。色々イレギュラーな事態だが、とりあえず彼女が今もここにいてくれることに安心する。

「消えちゃうことはないって、言われた!」

「……研究班にか?」

「ん」

 そこでとまどったようにマオは頷く。

「大丈夫だったか? 調べたとか、言ってたけど」

 さっきの白衣の姿を見ただけで、取り乱したマオの姿を思い出す。自分の意識がしっかりしていれば、ついていてやれたのに。悔しく思っていると、

「ん、怖かったけど。でも、エミリさんがずっとついててくれたから」

 マオが意外なことを言い出した。

「嬢ちゃんが?」

「そう!」

 そこでふふっと嬉しそうに微笑む。

「エミリさんがね、言ってくれたの。わたしが一緒じゃない限り、マオさんには指一本触れさせません! って。あのね」

 そこで内緒話をするように声を潜める。

「嬉しかった。守ってくれたみたいで」

「そうか」

 さっきも庇ってもらったしな。今度改めてお礼を言おう。覚えていたら。

 あの少女は破天荒で、ファッションセンスは壊滅的だが、悪い子ではないのだ。

「りゅーじ!」

 言いながらマオが背後から抱きついてくる。

 いつものことといえばいつものことなのだが、実体化されると気まずいな、これ。ちゃんと感触や体温、というものがあって。

 そのまま髪の毛をくしゃくしゃっとなで回される。

「マオ」

 咎めるというよりも呆れて名前を呼ぶと、

「髪の毛!」

 なんだか楽しそうに言われる。それは知っている。

 そのまま手を下ろし、今度は隆二の頬に触れる。指先でつっつかれる。

「……お前、何がしたいの」

「触ったらどんななのかな! ってずっと思ってたの!」

 テンションの高い声で返される。

 それですとんっと、腑に落ちた。ああ、そうか、彼女にとって触覚というのは、初めての感覚器官なのか。

 そう思ったらそれ以上強くは止められず、掴まれた指先をそのままにする。指と指を絡めるように手を繋がれる。嬉しそうに笑う。

「隆二の家の赤いソファー、あれは触ったらどんななのかな、楽しみ!」

 そんなに楽しみにするようなものじゃない。もう古いものだし、傷んでいる。それでも彼女はあれに触れてみたいのだろう。

「じゃあ、帰ったら、コーヒーいれてやるから」

「うん!」

「ソファーに座って」

「テレビ見ようね!」

 お決まりの台詞は満面の笑顔のマオが引き取った。

「ああ」

 頷くと、その頭をくしゃりと撫でた。柔らかい髪の毛が指先に絡んだ。

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