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07:『脇役なりに一生懸命生きています』

 どうも……昨日、散々サンドイッチされてた…石上直也です。

 心が挫けそうです。

 あ、そうだ。今朝の実況しますね。



「お兄ちゃん、起きて!」


「あと五分」


「それもう何回目?!」


「知らん」


「あと三秒以内に起きてこないと、……布団の中入るよ」


「別にいいぞー」


「いいの!?」


「うん、お前温かいし」


「じゃ、じゃあ……お言葉に甘えて……失礼しまーす」




 ぬあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!!

 心が折れるぅ!

 挫けるじゃ済まねえよもう!!

 俺が昨日サンドイッチされてからの次の日の朝がこれかよ!

 やってられるかよ!!

 仲直り早ぇよ!

 友里ちゃん、こっちの布団にも失礼してぇ! 石上直也は君を求めてるの! 癒しが欲しいのぉ!!


 ………落ち着こう。

 とにかく、落ち着こう。

 全国のリア充が爆発する呪文があるなら是非とも体得したいが……落ち着こう。


「友里、やっぱお前温かいな」


 落ち着こう


「お、お兄ちゃん…そんなに抱きついたら…」


 落ち着k――


「いいじゃん、減るもんじゃねえし」


 落ちt――


「く、くすぐったいよぅ」


 お、落ち――


「いい匂いだなぁ」


「うきゅぅ……///」


 お、お、お………落ち着けるかぁぁぁぁ!!

 なに朝っぱらからイチャイチャイチャイチャしてんだ貴様らぁぁぁ!!

 若者なら外で走れ! 布団でいつまでも寝るなぁ!!

 あー、腹立つ!

 くっそ腹立つ!

 僕も布団に入れて下さい!!


 そんな感じで壁にガンガン頭を打ち付けてたら、突然扉が開いた。

 視線を向けてみれば、そこには友里がいた。


「あんた……」


 なにやら、大変ご立腹だった。


「ど、どうしたんだ…友里? あ、もしかして僕の布団の中に――」


「誰が入るかボケェ!!」


「ぐはっ!」


 思いっきり、蹴り飛ばされた。

 効くねぇ。


「さっきからガンガンガンガンうるっさいのよ! お兄ちゃんとの甘い一時を返しなさいよ!!」


「ご、ごめっ! ごめっ―な、殴るの――ご、ごめんてごめっ――」


 連続往復ビンタによって、僕は死にそうだった。

 別の意味では死んだけど。


「フンッ、ご飯できてるんだから、早く来なさいよ!」


「はい……分かりました」


 バタンと、扉が閉まり、僕は意気消沈――しているわけがなく、


「えへへ…友里ちゃんの手……柔らかかったなぁ…」




◇◇◇◇◇



「変態」


 現在朝のHR前、今朝の経緯を教室で瑛さんに話したらドン引きされました。

 失礼な。


「僕のどこが変態なんだよ、至って普通の妹想いの兄でしょ?」


「度が越えてんのよ」


「度なんて越えてない、普通だよ普通」


「はあ……」


 瑛さんは溜め息を吐いた後、僕を睨んだ。


「じゃあ例えば、目の前にあんたの妹のパンツが落ちてたとする」


「どこっ?! 友里ちゃんのパンツどこぉ?!」


「………だから、例え話」


「なーんだ」


「………」


 瑛さんは眉間に皺を寄せ、僕を悩ましげに見つめる。……ハアハア。


「もし、妹のパンツが落ちてたら……あんたはどうする?」


「え、被るけど」


「はい、アウト」


「なぜっ?!」


「なんで驚くのよ……」


 え、だって……パンツだよ?!

 友里ちゃんの……パンツだよ?!

 被るしかないじゃん!!


 ……ん、いや…待てよ?

 ま、まさか……


「この場合は、食べるが正解だったか……?」


「………」


「……瑛さーん? なんで携帯なんか取り出すんだい?」


「現行犯で捕まるより、未遂犯の方がいいでしょ?」


「ごめんなさい! 通報しないで下さい!!」


「そんなんだから、妹に嫌われるのよ」


「そうかなぁ?」


「そうよ」


 そこまで断言しなくても……。

 まあ、自分でも薄々は分かってたけどね。


「とにかく、少しはそのバカを自重しなさいよね」


「バカって……」


 瑛さんははっきりものを言うんだよなぁ。

 昔は口数が少なかったのに。

 あ、実は瑛さんとは中学からの付き合いなんですよ。


「ほんと…あんた変わったわよね?」


 え?

 急に、少し切なさを含んだ声を、瑛さんは出した。

 突然、何?


「中学の頃はもう少しまともじゃなかった? 見た目だって、今よりチャラかったし」


「……さあ?」


 たしかに、昔はまともだったかもしれない、チャラかったかもしれない。

 だが、僕は瑛さんの問いをはぐらかした。

 答える気がなかったからだ。

 言うまでもなく。



――キーン・コーン・カーン・コーン――



 HRを告げる鐘の音、それがやけに耳に響いた。




◇◇◇◇◇



「………」


――N・O・K――


 そう書かれたゲームソフトを持った少女は、それを唐突に投げ捨てた。




「くだらない」

※この作品は、あくまでコメディーです

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