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06:『兄と妹には、よく挟まれます』

「………」


「………」


「……えぇと」



 どうも、現在兄妹三人で仲良く帰宅している石上直也です。

 さて、どうした事でしょうか。

 空気が、重いです。

 理由を簡単に言えば、友里が兄貴を怒ったのがきっかけです。

 手紙で呼び出された時はきちんと差出人の名前が書いてあるかを確認し、書いてないのなら無視しろ、と。

 しかし兄貴は友里の言い分に対し、恥ずかしくて名前が書けない場合もある、無視するのはよくない、と反論したのです。

 そして喧嘩してしまったのです。

 まあ、兄妹なら誰しも喧嘩くらいするでしょうし、喧嘩するほど仲が良いと言いますから、僕は特に何とも思いません。

 逆に友里の慰め役なんかが転がってこないかと、不謹慎にも内心ワクワクしてたりします。

 ……ワクワク。

 チラッ

 チラッ


 友里ちゅわ〜ん、ぼ、僕に甘えても…いいんだからね?


 チラッ


「………」


 あのー、友里さん?

 流石に無視は…ちょっと……

 なんか、反応を……


「………」


 えぇ………


「………」


 兄貴もさっきから黙りっぱなしだし。

 並び順は、兄貴・僕・友里なので、沈黙の二人に挟まれちゃてるんですねぇ、今。

 脇役が主役二人によってサンドイッチされちゃってるんですねぇ、はい。シュールですねぇ。


「「………」」


 …………………………………………もう、許してください。

 耐えられないんですよ、この沈黙!

 僕関係ないじゃん! いなくていいじゃん!!

 なんで二人とも僕を壁役にすんの?!

 脇役巻き込むなよぉ、ちょっと!!

 仕方ない、近くのコンビニで立ち読みするか。


「ああ、ごめん。コンビニに用事あるから先に帰ってて二人とも」


 どうだ、この完璧な離脱文句!

 さっさと二人で帰りなさい!


「……そういや、俺もコンビニに用事あるんだった」


「……私も」


 ……ちょ

 う、嘘でしょ?!

 なんでついてくんのぉぉぉぉ!?

 ヤバイってヤバイって!

 どうする? まさかの予想外なんだけど!

 いや、待て……コンビニだぞ、コンビニ。

 正式名はコンビニエンスストアだ。

 コンビニエンス、つまり便利が売り。

 品は近所のスーパーに優るとも劣らぬものばかりだ。

 いくらでも店内から二人と距離を取る方法なんざ、ごまんとある。

 焦るなよ、僕。

 大丈夫、僕はできる脇役だ。

 二人と距離を取りつつ、コンビニから退散すりゃあいい。


 そして、


「………」


「………」


「………なんでこうなるの?」


 兄貴と友里に挟まれ、現在立ち読み中。

 空気が、より重くなった。

 僕が立ち読みを始めた瞬間、コイツら僕を挟んだ上で僕と同様に立ち読みを始めやがった!!

 こ、これは予想外すぎる!!

 兄貴なら飲料水、友里なら化粧品の所に行くと思ってたのに!!

 どうすんだよ、今回モノローグの量半端ねえよ!

 仕方ない…仕方ない……!!


「ああ面白かった! じゃあちょっと飲み物見てくるわ!!」


「あ、じゃあ俺も」


「私も行く」


 だからなんでついてくんの?!

 ひよこ!? ひよこなの君たち!?

 勘弁してくれよぉ、しかもなんでまた僕をサンドイッチすんのかねぇ。

 逃がす気ないよね、全くといって!!


「じゃあ次はお菓子見るから!」


「分かった」


「ついてく」


 分かるな! ついてくんな!


 まあ、こんな感じで結局………


「ありがとうございましたー」


 店員の声と扉の開閉の際に流れる曲を聞きながら、兄妹三人仲良くコンビニから出てきました。


 逃げられないんですけど……どうすればいいですか?

 ヤバイぞ……コンビニがダメなら……………………………ホームセンターだ!!

 あの広さ、大きさ!

 撹乱するにはもってこいだ!!


「ちょっと、今度はホームセンター寄るから先に帰っていいよ」


「「ついてく」」


 罠にかかった!

 ククッ…勝負はもらったも同然だ。


 いいか、僕。

 呼吸を整えろ、前だけを見ろ、後ろを振り向くな、未来に向かって……走り抜けぇ!!

 ホームセンターに入った瞬間、僕はすかさず走り出した。


「ペットコーナーに行きたいなぁ!!」


 後ろから僕を追う二種類の足音。

 だが甘い! いくら運動神経抜群の二人でも、スタートダッシュをミスれば致命的だ。

 店内を大きく廻れば、出入り口に到達すれば、僕の勝ちは約束されたものだ!

 とにかく、前だけを見た。

 前だけを見据えた。


 後ろなんて見なかった。



「お客様」



 嫌な声が聞こえたんだ。


「店内では、走らないで下さい」


 横から不意に聞こえてきた店員の声、僕はそれを無視した結果……


 男の魂を、思いっきり蹴られた。

 はうぅ!


「ぐはっ!!?」


 そのまま痛みで勢いよく転び、僕は顔を歪めながらも、店員を睨み付けた。

 店員はなんと、桜坂瑛さんでした。

 背後には兄貴と友里、前には瑛さん。

 まさかのデルタフォーメーション……だと?


 それから先の事は……泣きたいです。

 瑛さんに謝りまくって、結局三人で家に帰って、帰ってからもサンドイッチされて………


 脇役に八つ当たりすんなよ、主役ども!!

 なんか全然実況できなかったんですけど!!

 さよなら! また明日!!

 …………ぐすん。

【今回、新キャラは出ていません】

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