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05:『水色と白の縞模様が記憶に新しいです』

―新聞部―


 ここは、学校中のあらゆる情報が集まる場所――新聞部である。

 今日も情報を求め、迷える子羊である僕は、放課後にここへやってきたのだった。


 あ、どうも。

 石上直也です。


「さてさて直也くん。今日はどんな情報が知りたいんだい?」


「ずばり、友里のスリーサイズ!」


「うん、真剣な顔で実の妹のスリーサイズを聞く兄を私は初めて見た」


「教えて教えて教えて教えて教えて教えて教えて教えて教えて教えて教えて教えて教えて教えて教えてぇぇぇぇぇ!!!」


「私にも客を選ぶ権利があるからねぇ。女の立場としても、教えられないね」


 クッソ、教えられないってことは知ってんのかよ!!

 今、僕が交渉してる相手は新聞部部長『水原 結衣』、二年生。

 僕とは違うクラスです。


「だったら本人に聞けばいいじゃない。ほら」


「………え?」


 水原さんは新聞部の部室の扉の方を指差す。

 ま、まさか………


「な〜お〜やぁ〜!!」


 あ〜、愛しの女神の声が聞こえてくるぅ。

 恐る恐る…背後を見てみると……

 友里が、怒ってました。

 とても。


「なに私のスリーサイズ聞いてんのよアホぉ!!」


「ぐおっ!!」


 友里が勢いよく振り上げた鞄の角が、男の魂にクリーンヒット!!

 アウチッ! ………ハアハア……


「ぐおぉ〜! 吐き気するぅ!!」


 男の魂――どことは言わない、察してくれ――を押さえ、痛みに顔を歪める。


「で。石上友里さん、この新聞部に何の用? あ、もしかしてコレの回収?」


 コレって……僕のことか。


「冗談じゃないです。お兄ちゃんの居場所が知りたいんです」


「あ、兄貴なら……確か校舎裏に呼び出されてた……」


「はっ?! もしかして喧嘩!?」


「そこまでは……知らない……ただ、ピンクの手紙に『話があります(はーと)』って書いてあるのは知ってる……」


「それラブレターじゃない!!」


「ぐほっ?!」


 ゆ、友里ちゃ〜ん?

 二回目はきついよ、流石に。

 ね?


「直也、案内して!!」


「ど、どこに?」


「校舎裏!」


「そ、そうだねぇ……」


 横になって倒れている僕、僕を立って見下ろす友里。

 あと、もうちょい……!


「って、なに人のスカートの中を見ようとしてんのよ!」


 友里の蹴りが顔面にクリーンヒット!!

 ごちそうさまです!

 蹴られる直前、僕は確かに見たんです!!


 鼻血を出しながら気絶する直前、水原さんは俺に聞いた。


「何色だった?」


「水色と白の縞模様……」


「そうか、よくやった。メモメモ……。そしてご苦労さん、お迎えがきたぞ」


「え?」


 薄れいく意識の中、友里の上履きが迫ってくるのが見えた。



「死ぃぃぃねぇぇぇぇ!!」


 アハンッ!

 川の向こうで、手を振っているじいちゃんばあちゃんの姿が…見え……た。




―校舎裏―


 あの後、意識をなんとか取り戻した僕は、友里を引き連れて校舎裏まで来た。

 しかし、


「なんで水原さんまでいるの?」


「こういうイベントを新聞部が見逃すわけないじゃん」


「そっすねぇ」


 はあ、それにしても、こんな大所帯での実況は初めてだなぁ。

 えぇと……あ! 兄貴だ!!


「これは一体、どういうことだ?」


 ……うん、一体どういうことなんでしょうか。

 兄貴は、たくさんの不良達に囲まれていた。

 不良達の中に、昼休みに兄貴にボコボコにされた不良がいるを発見、あいつの仲間か。

 ということは、あのラブレターはただのフェイクですか。


「よぉ、石上ぃ。うちの奴がお前に世話になったらしいな、た〜か〜らぁ、俺達全員でお礼してやるよ!!」


 不良達を束ねるリーダーらしき人物が、兄貴に言う。


「おい。女の子はどこだ?」


「ああ?」


 兄貴は懐からピンクの手紙を取り出す。


「俺にこの手紙を送った女の子は、一体どこにいる!?」


『………』


 不良達は一瞬ポカンとした後、盛大に笑いだした。

 兄貴、まさか気づいてないのか?


「頭ぁ、こいつ、自分が騙されたことに気づいてませんぜ!」


「ふん、とんだ馬鹿がいたものだな。状況を見ろ、お前は騙されたんだよ!!」


「………」


 兄貴は俯く。

 僕達は引きつった笑いしか出せない。


「さすがだな」


「さすがですね」


「さすがお兄ちゃん」


 どんだけ鈍いんだよ!!


 初めて、僕達三人の心が一つになった瞬間だった。

 すると、友里は何かに気づいたのか、ハッとした表情になる。


「直也、お兄ちゃんを助けるわよ!」


「いや、僕が行っても大した戦力にならないし」


「直也!」


 この時初めて、友里は僕にすがってきた。

 でも僕は、この状況を打破できるだけのモノを、持ち合わせてなかった。

 脇役だから。


「全く、この学校にこれだけの膿があるとはな」


 っと、どうやら助っ人登場のようだ。

 声の主を見た後、僕は水原さんの方を向いた。

 案の定、ピースサインしてる。


「呼んだんですか?」


「うん呼んだ」


 この状況を打破できる存在である声の主、助っ人。


「部長!」


「なっ、お前はっ?!」


 兄貴が部長と呼び、不良達が驚愕している。

 駆けつけたのは………………


「私の部員相手に多数で相手か……。私も混ぜてもらっていいか?」


 駆けつけたのは、柔道部・部長『水原 香苗』さん。

 僕の隣にいる水原さんの、実の姉です。


「か、頭……やべえですよ」


「ば、馬鹿言うな! 相手は女と優男、しかも数ならこっちが断然上だ! 行くぞ!!」


 二対多数。



 この戦いに決着が着いたのは、僅か十分後のことだった。


「この学校の不良は腑抜けばかりだな。この程度とはな」


 結果だけ言えば、兄貴と水原さんのお姉さんの圧勝だった。

 その後、風紀委員長の日比谷さんの指示の下、不良達は揃って停学を言い渡されたそうな。

 不憫である。


「さあて、じゃあ俺は先に帰ります」


 そう言って、兄貴は校舎裏を去った。

 僕と友里も、物陰から出ることにする。


「じゃあ、水原さん。僕達も帰りますね」


「了解。じゃ、また明日」


 友里も水原さんにぺこりとお辞儀をし、僕と共に兄貴を追いかけた。

 さて、今回はこんな感じでさよならですかね。

 では、また次回に。



◇◇◇◇◇


「結衣」


 直也達を見送った後、姉さんに声をかけられた。

 私はまだ物陰に隠れたままだったが、どうやら姉さんにはバレてたらしい。


「なに?」


「お前、こんなところで何してた?」


「スクープの匂いがしたから見物してただけだよ」


「直樹の弟と一緒にか?」


「そうだよ」


「………」


「不満そうだな、姉さん」


 顔を歪めた姉さんは、やがて口を開いた。


「付き合う友人は、きちんと選べ」


「選んでるよ、十分に」


 私と直也の境遇は似ている。

 優秀な兄、姉がいる……劣った弟、妹。

 類は友を呼ぶとはよく言ったものだ。


 だから姉さんに言ってやる。

 言わなきゃ姉さんは分からないだろう。


「私の人生は、私だけのものだ」


「分かっている。だからこそ、姉として助言してる」


 ……姉さん、あんた…なに一つ分かってないよ。

 私達が、どんだけあんた達を憎んでるのかを。


「直也はね、凄い奴なんだよ……姉さん」


「どこがだ? シスコンバカにしか見えないが?」


「そうだね、確かにシスコンバカだよ。でもね、直也は……自分を普通だと断言できるんだ。たとえ他人に、どれだけ否定されようとも」


 自分を普通と言い切れる人間って、それはとても凄いんだよ……姉さん

【水原 結衣】

性別 :女

誕生日:4月17日

趣味 :メモ

【備考】

 新聞部部長であり、僕に情報を提供してくれる情報屋。

 学校内の最新情報は全て彼女が握っている。

 ただ、気まぐれな性格故に、情報の対価がえげつない。

 校内で数少ない僕の悪友。

 姉の香苗さんには少なからずコンプレックスがある模様。



【水原 香苗】

性別 :女

誕生日:8月27日

趣味 :鍛練

【備考】

 我が校最強を誇る戦乙女であり、柔道部部長です。

 その圧倒的な威圧感に加え、我が校の生徒会長に勝るとも劣らないカリスマ性の持ち主。

 ただ、ちょっとした選民思想家であるため、自分が気に入った人間には甘いが、それ以外の人間には厳しい対応をする。

 どうやら、僕は彼女に嫌われてるみたいです。

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